【労働契約法】職務限定でも配転できるか
2012/05/11
■ 事業撤退し仕事なくなる・・・就業規則には根拠規定あり

【問】
貿易業務のエキスパートとして中途採用した従業員がいますが、事業撤退により担当職務が消滅してしまいます。

当社の就業規則では、「業務上の必要がある場合は、従事する業務の変更を命じることができる」という一文が盛り込んであります。

これを根拠に、他の業務への配転を命じることができるでしょうか。

● 「特約」は同意得て変更を

【答】
いわゆる「総合職」型の正社員は、採用時に、転勤・配転等の包括的同意が成立しているのが普通です。

勤務地・職務限定の従業員とは労働条件が異なり、適用する就業規則の条文上も区別が設けられています。

しかし、お尋ねのエキスパート従業員は、職務内容は限定されているものの、賃金その他の労働条件面では他の総合職型正社員並み(一部はそれ以上)に処遇していると思われます。

特にエキスパート従業員専用の就業規則が制定されていなければ、正社員用の就業規則が適用されているはずです。

労働契約締結に際し、「使用者が合理的な就業規則を周知させていた場合、労働契約の内容は就業規則による」のが原則です(労働契約法第7条)。

ただし、「労使がそれと異なる労働条件を合意していた部分については、『第12条に該当する部分を除き』」この限りでない」とされています。

「第12条に該当する」とは、「就業規則の最低基準効」が適用されるケースを指します。労働契約の内容が就業規則を下回るときは、就業規則の規定が優先します。

しかし、「第12条は、就業規則で定める基準以上の労働契約は、これを有効とする趣旨である」と解されています(平20.1.23基発第0123004号)。

職務限定も、労働者にとって有利な個別特約とみなされます。

こうした特約は、個別同意に基づいて変更すべきものとされています。

パターンとしては、「@個別合意による変更、A合意によっで設定した留保変更権行使による変更、B変更解約告知による変更」が考えられます(荒木尚志「労働法」)。

ただし、変更解約告知については、労働契約法でも特別な立法的手当てがなされず、解釈論・立法論上の対応に委ねられているのが現状です。

ご本人とよく話し合って、@の個別同意を取り付けるようお勧めします。

【育児介護休業法】看護休暇は出勤扱い?
2012/05/11
■ 年休の計算で不利益

【問】
年次有給休暇の付与日数を計算する際に疑問が生じました。

育介休業法で定める子の看護休暇を取得した日は、出勤したものとみなすのでしょうか。

● 欠勤処理も法的に可能

【答】
育介休業法では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員に対して1年度5日まで(2人以上の場合10日まで)、病気やケガをした子の看護または子に予防接種・健康診断を受けさせるために、休暇が取得できます(第16条の2)。

負傷や疾病の種類、程度に特段の制限はありません。

一方、使用者は原則として請求を拒否できませんが、休暇期間中の賃金は無給でも差し支えないとされています。

同法では、看護休暇等の取得を理由とした不利益取扱いを禁止しています。

年休の出勤率計算での欠勤扱いが不利益に当たるかが問題です。

年休は過去1年間(最初は6カ月)の出勤率が8割以上の場合に権利が発生します。

労基法第39条第8項では「育介休業法に規定する育児休業または介護休業をした期間は、これを出勤したものとみなす」と規定していますが、看護休暇については特に規定されていません。

年休の付与日数の計算に当たって、「看護休暇を出勤したとみなす」のは望ましいことですが、分母である全労働日に含めたうえで欠勤扱いすることも可能です。

【労働基準法】派遣先が5割増負担?
2012/04/23
■ 中小は適用猶予だが・・・長時間労働で残業60時間超

【問】
 業務繁忙で派遣労働者の受入れを決めましたが、労基法の適用で質問があります。
 
 派遣労働者の担当者に、「受注が集中したときは、長時間労働もあり得る」旨説明したところ、「残業時間が月60時間を超えると、5割以上の割増賃金が必要になる」といわれました。

 当社は、40人規模の小企業ですが、「割増率5割」の規定は適用猶予とならないのでしょうか。

● 料金に乗せるか要交渉

【答】
 中小事業主は、「当分の間」、割増率5割の規定は適用されません(労基法第138条)。

 「改正法施行(平成22年4月1日)後3年を経過した時点で」、適用猶予の継続・廃止を検討する規定となっています(平20附則第3条)。
 
 「派遣労働者は、派遣元との間に労働契約関係があるため、派遣元の労働者数に算定」されます(平21.5.29基発第0529001号)。

 派遣業はサービス業に分類され、「資本金5,000万円超『かつ』労働者100人超」であれば、中小事業主の範囲から外れてしまいます。

 「中小事業主か否かは、事業場単位ではなく、企業単位」でみます(前掲解釈例規)。

 派遣労働者について、60時間を超える時間外も想定されるのなら、次の2点を確認する必要があります。

 第1に、派遣先での時間外労働は、派遣元での時間外・休日(36)協定の締結を前提とします(派遣法第44条第2項)。

 派遣元で、特別条項を結び、「時間外の限度基準(平10・労働省告示第154号)」で定める上限(月45時間等)を超える時間外労働が可能となっている必要があります。

 第2に、派遣契約の締結事項の1つに「(時間外を可能とする場合)、延長することができる時間数」が挙げられています(派遣法施行規則第22条)。

 上限を何時間と定めるか、契約締結時によく話し合っておくべきでしょう。

 2つの条件を満たし、適法に時間外労働(60時間超)に従事させた場合、5割以上の割増賃金の支払い義務を直接負うのは派遣元です(派遣元が中小事業主に該当しない場合)。

 派遣元は60時間を超えた際、派遣料金を上乗せするよう求めていますが、据置とする契約も可能です。

 割増賃金と派遣料金をリンクさせるか否かは、派遣先・元の交渉に委ねられます。

【厚生年金保険法】子へ転給されるか
2012/04/23
■ 遺族厚生年金の受給権

【問】
 遺族厚生年金には、転給の制度がないと聞きます。

 夫の遺族厚生年金を受給していた妻が亡くなっても、その子が受給することはできないのでしょうか。

● 妻亡くなると支給停止解除

【答】
 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者または被保険者であった者の配偶者、子、父母、孫または祖父母です(厚年法第59条)。
 
 受給権を有する子は、被保険者の死亡当時に生計を維持されていた、18歳に達する日以後最初の3月31日までにある子(20歳未満で1級・2級の障害の状態にある子)です。

 夫が亡くなった原因が業務上災害だとします。

 遺族補償年金の受給権者(妻)が死亡し、受給権が消滅すると、次順位者である子に遺族補償年金が支給されます(労災保険法第16条の4)。

 一方、厚生年金の場合、遺族厚生年金を受けられる先順位者が受給権を失った場合でも、次順位の人が受給権を得る(転給)ことはありません。

 ただし、妻が遺族厚生年金を受けている間は、子に対する遺族厚生年金は、原則として支給が停止されているに過ぎません(厚年法第66条)。

 受給順位の第1位は配偶者単独ではなく、「配偶者または子」というイメージです。

 速やかに支給停止事由消滅の届出を、年金事務所等に提出する必要があります(同法施行規則第65条)。

【雇用保険法】賃金日額も1年計算?
2012/04/23
■ 自己都合により退職

【問】
 自己都合により、退職する労働者がいます。

 最後の半年は、残業が少ないうえに、欠勤日もあり、賃金の支払額は多くありません。

 基本手当の算定ベースとなる賃金日額は、6カ月、1年のいずれの賃金総額を用いて計算するのが正しいのでしょうか。

● 保険者期間と異なり半年

【答】
 基本手当の受給資格は、離職理由と被保険者期間により決まります。

 原則は、「離職の日以前2年間に被保険者期間が12カ月以上」あることです(雇保法第13条)。

 一方、特定理由離職者・特定受給資格者に該当するときは、「離職の日以前1年間に被保険者期間が6カ月以上」あれば、要件を満たします。

 お尋ねの方は、自己都合退職ですから、正当な理由がなければ「2年間に12カ月以上」の要件が適用されます。

 しかし、これは受給資格の有無を判定する条件であって、賃金日額の算定期間とは関係ありません。

 手当受給のために被保険者期間12カ月が必要な離職理由の人であっても、同6カ月の人であっても、賃金日額は「最後の6カ月の賃金総額」を用いて計算します。

【労働基準法】積立年休の買い上げ要求?
2012/04/18
■ 傷病時に限り取得可能・・・法定残日数は消化して退職

【問】
 当社では、いわゆる「積立年休制度」を設け、傷病時に限り取得を認めています。

 近く自己都合退職する従業員が、法定の年休の残日数をすべて消化したうえで、退職する予定を組んでいます。

 それは仕方がないとして、さらに積立年休の残日数について買上げを要求しています。

 応じる必要があるのでしょうか。

● 法上回る分だが義務なし

【答】
 年休は、「2年の消滅時効が認められる」とされています(昭22.12.15基発第150号)。

 期間内に年休を取得しなければ、権利が消減してしまいます。

 しかし、時効消滅した年休を記録しておき、傷病者の利用を認める例も広くみられます。これを、「積立年休」といっています。

 傷病者は、法定の年休を取得した後、積立年休も消化し終わった段階で、欠勤または傷病休職となります。

 積立年休は、法所定の年休にプラスして付与する年休(法定外年休)と位直付けられます。法定外年休については、「その成立要件・法的効果などは当事者間の取決めに委ね」られます(菅野和夫「労働法」)。

 ただし、「その要件・効果について特別の定めがなされていない場合には、法定年休と同様の要件・効果(私法上の)が約定されたと解釈」されるので、注意が必要です。

 年休は、ストライキ使用を除き、利用目的に制限がないといわれます。

 しかし、積立年休の場合は、例えば「傷病」のみに使用目的を限ることも可能です。

 「50日を上限とする」「医師の診断書(会社が指定する医師の検診を命じることがある)の提出を条件とする」などのルールを定めることもできます。

 お尋ねにある従業員は、積立年休の買上げを求めています。

 法定年休については、「買上げの予約をし、これに基づいて年休残日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは法違反」と解されています(昭30.11.30基収第4718号)。

 一方、「本条が定める法定日数を超えて与えられている部分については、買上げをしても違反でない」(昭30.3.31基発第513号)とされています。

 だからといって、買上げをする義務もなく、傷病など所定の休暇取得事由がなければ、残日数分の積立年休利用を認める必要もありません。

【健康保険法】産後も保険適用外か
2012/04/18
■ 原因不明の体調不良

【問】
 産後休業を経て復職した従業員の体調が思わしくありません。

 具体的にどこが悪いわけではないということですが、原因がはっきりしません。

 正常分娩であれば引き続き、保険給付の対象外なのでしょうか。

● 自覚症状あれば療養給付を支給

【答】
 正常分娩の場合に医師の手当てを受けても、健保法上の保険給付の対象となる「疾病または負傷」には当たらないと考えられています。

 一方、帝王切開などの異常分娩には一部健保が適用されます。

 保険適用とはいえ、高額な費用がかかることがありますが、高額療養費の現物給付を受けることができます。

 この場合、保険者から「限度額適用認定」を受ける必要があります(健保法施行規則第103条の2)。
 
 出産それ自体の保険適用の有無が、産後の保険適用に影響するわけではありません。

 疾病、負傷の治療を目的としない場合は、療養の給付の対象外です。

 「単なる疲労やけん怠」も疾病とはみなされません。

 しかし、本人にはっきりとした自覚症状があり、法で定める保険医療機関で医師から診療を受ければ、保険適用となる診察の一環とみなされます。

 「診断の結果何ら疾病と認めるべき兆候がない場合にもその診断に要した費用は、『療養に要した費用』として請求できる」(昭10.11.9保基第338号)とされています。

【労働者災害補償保険法】ホテルが住居で通災か
2012/04/18
■ 顧客を接待後に宿泊

【問】
 当社従業員が社外での打ち合わせ後、顧客と一緒に飲みに行き、そのままカプセルホテルに宿泊しました。

 飲食費用は会社が補てんしましたが、時間外は付けていません。

 半ば業務との関連を認めた形ですが、翌朝、会社に出勤する途中、事故にあった場合、通勤災害になるでしょうか。

● 業務命令ない限り認定ムリ

【答】
 通勤の定義は労基法第7条第2項第1号から第3号に定められていますが、その第1号に「住居と就業の場所との間の往復」が挙げられています。

 お尋ねのケースでは、目的地が会社ですから「就業の場所」への移動と認められます。

 問題は、出発地が自宅ではなく、カプセルホテルという点です。

 解釈例規では、「長時間の残業や早出出勤、交通ストライキ等の交通事情、台風などの自然現象等の不可抗力的な事情により、一時的に通常の住居以外の場所に宿泊する場合は、当該場所を住居
と認めて差し支えなない」としています(平18.3.31基発第0331042号)。

 宴会の世話役を命じられる等の業務命令がない場合、たとえ費用が補てんされても、「長時間残業」等と同列に扱うことはできず、通勤災害とは認められません。

【労働者災害補償保険法】傷病年金より休業給付が得か
2012/04/06
■ 「8割補償」選びたい・・・低い等級だと下回ることも

【問】
傷病が長期間治ゆせず、傷病等級に該当するときは、傷病補償年金が支払われます。

障害の程度がかなり重いケースが想定されますが、仮に3級に認定されたとすれば、給付基礎日額の245日分の年金となります。

そのまま休業補償給付をもらっていれば賃金の8割が補償されるので、不利なようにも思います。

どちらか選択できるのでしょうか。

● 選択はムリだが差額支給

【答】
傷病補償年金は、療養の開始後1年6カ月を経過した日(またはその日以降)に、傷病が治ゆせず、「3等級の傷病等級に該当する場合に支給されます(労災保険法第12条の8第3項)。

給付の決定は政府の職権によって行われ、実務的には労基署長が支給の可否を認定します。ですから、労働者側が「どちらか選択」するものではありません。

傷病補償給付の認定前と後の給付水準を比較する際には、法に基づく給付のほか、社会復帰促進等事業として支給される特別支給金も考慮に入れる必要があります。

認定前は休業補償給付と休業特別支給金を併給します。

休業補償給付が給付基礎日額の60%、特別支給金が同20%なので、おおむね休業前の賃金水準の8割相当が補償されます。

認定後は、傷病補償給付と傷病特別支給金・特別年金を併給します。

特別支給金は一時金なので除き、他の2給付について検討します。

傷病補償給付は、傷病等級に基づく年金です。

1級…給付基礎日額313日分
2級…同277日分
3級…同245日分

傷病特別年金は「ボーナス特別支給金」の一種で、障害等級1〜3級に応じて、ボーナスを基準とする「算定基礎日額」の313日〜245日分が支給されます。

しかし、ボーナスの少ない(支給されない)労働者もいるので、傷病補償給付と傷病特別年金の合計が必ず認定前の給付水準(休業補償給付+休業特別支給金)を上回るとは限りません。

このため、傷病補償給付と傷病特別年金の合計が年金給付基礎日額の292日分(365日の80%相当)に満たないときは、その差額を特別支給金として支給する仕組みが設けられています(特別支給金規則昭52附則第6条)。

【厚生年金保険法】天引き分の年金保証?
2012/04/06
■ 過去一部納めたか不明

【問】
先日、「ねんきん定期便」が届きました。

厚生年金は、給与から保険料が天引きされているので確認できますが、国民年金は以前支払っていたか忘れてしまいました。

納めた分の厚生年金は保証されるのでしょうか。

● 25年なくても受給は可能に

【答】
厚年法第31条の2では、厚生労働大臣は、被保険者に対し、保険料納付の実績および将来の給付に関する必要な情報を分かりやすい形で通知するとしています。

具体的には、被保険者期間の月数や最近1年間の標準報酬月額、老齢年金の見込額が通知されます(施行規則第12条の2)。

これが、毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」です。

老齢厚生年金を受給するには、原則、厚生年金と国民年金を合わせて25年間の被保険者期間を満たさなければなりません。

25年には保険料を納めた期間だけでなく、免除された期間等も含まれます。

厚生年金の被保険者でなく、国民年金に加入していた期間の保険料の納付記録が長期間存在しない場合、老齢基礎年金の受給資格を満たさないおそれがあります。

老齢厚生年金ももらえません。

25年に満たなくても、生年月日に応じて、受給資格期間の短縮措置が設けられています(国民年金法第12条第1項第2号、附則別表第2)。

昭和31年4月1日以前に生まれた人は、厚生年金の被保険者期間が20〜24年あれば、受給権を得ることができます。

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