【労働基準法】週の端数1日に割増必要か?
2018/08/09
■ 1年変形労働制を採用・・・年365日は52週と1日

【問】

当社では1年単位変形労働時間制の採用を検討しています。

役員会用に説明資料を作成中ですが、時間外労働の計算について質問があります。

「1週間単位」でも時間外発生の有無を確認する必要があるといいます。

年間365日を7日で割ると端数が出ますが、端数の週はどのように考えるのでしょうか。

● 8時間超えた分が対象

【答】

1年単位変形労働時間制(労基法32条の4)は、「1年の労働時間平均が40時間以内であれば、割増賃金を要しない制度」といういい方がされます。

しかし、厳密にいうと、次の3パターンで時間外労働が発生します。

@ 所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間を超えた分、8時間以内の日は8時間を超えた分

A 所定労働時間が40時間を超える週はその所定労働時間を超えた分、40時間以内の週は40時間を超えた分(@の対象となった分を除く)

B 対象期間全体については次の総枠を超える分(@Aの分除く)

40時間×対象期間の日数÷7日

ご質問は、このうちAに関する部分です。

365日を7日で割ると、52週と1日になり、端数が出ます。

端数の問題は、一ケ月単位変形労働時間制でも生じますが、こちらは労基法コンメンタール中に説明があります。

「1週間については暦週(日曜〜土曜)でみるのが原則だが、事業場において週の起算日を変形期間の開始の日から捉えることとしている場合には、変形期間の最後の端数日数については『40時間×端日数÷7日』でみることも差し支えない」とされています。

1年の最後の端数(閏年以外は1日)は、「40時間×1日÷7日=5.71時間」が基準となります。

これを前出のAに当てはめると、時間外の対象となるのは、「所定労働時間が5.71時間を超える週はその所定労働時間を超えた分、5.71時間以内の週は5.71時間を超えた分」です。

最後の1日が出社日で所定労働時間が8時間だったとすると、その週(端数1日だけの週)の所定労働時間も8時間となり、5.71時間を超えています。

結局、通常どおり8時間を基準として、それを超える分が時間外となります(@の規定によりカウントする)。

【労働基準法】完成できないと解雇?
2018/08/09
■ 成果物求められる業務

【問】

デザイナーの仕事をしている知人が、会社の望むような成果物が完成しなかったことを理由に、会社を辞めるかどうかでもめているそうです。

不当解雇になるのではという意見もある一方で、デザインの完成を期待されている以上、結果を出せなければやむを得ないのではないかという意見もあるのですが、どのように考えたら良いのでしょうか。

● 労務の提供で債務は履行に

【答】

請負(業務委託)で仕事をする場合は、完成品を納品できなければ契約が打ち切られる場合がありますが、労働契約を交わした雇用では就業規則にない理由での解雇は労基法89条3号に反します。

就業規則に定めがあっても、理由が客観的に合理的でなく社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用とされ無効です(労契法16条)。

請負契約は「仕事の完成」により報酬を受けるので、成果物が完成しなければ債務不履行となり発注者が契約を解除し得るのに対し、雇用(労働)契約は「労働の従事」について対価を受けるので、労務を提供すれば債務を履行したことになり、未完成でも契約違反になりません(民法623条、632条)。

使用者が雇用する労働者を勤務成績不良等の理由で解雇できるのは、教育指導を行うなど手を尽くしても改善がみられないような、やむを得ないケースに限られることになります。

【労働基準法】雨天順延で休日に?
2018/08/06
■ 屋外のイベント業務

【問】

年間を通して屋外のイベントを手掛けているため、梅雨の時期になると毎年天候に悩まされます。

開催当日の朝に雨で順延になると、スタッフに急遽休みを取ってもらって、当初休日扱いにしていた翌日に出てきてもらわないといけなくなったりします。

開催が中止になった日について無給にするのは問題があるとも聞いていますが、どのように対処したら良いでしょろか。

● 前日中止なら振替ができる

【答】

休日は原則として1週間に最低1日は付与するものと定められており(労基法35条1項)、そのため毎週決まった日を休日にしている企業等も多いでしょう。

屋外での作業など天候により遂行できなくなるような業務については、休日はなるべく一定日に与えつつ、雨天の場合に休日を変更できる旨を規定することが望ましいとされています(昭23.04.26基発651号ほか)。

ただし、労働日の当日に業務がなくなったときはその日を休日とはできず、労基法26条の休業手当を支払う必要が生じます。

休業の理由が使用者の貴に帰すべきでない場合は除かれますが、自然災害ではなく単なる雨天による中止や順延は該当しません。

仮に天気予報等であらかじめ中止が決まれば、前日までに休日の振替を行うことによって、当初の開催日を休日とすることは可能です。

【育児介護法】深夜免除し賃金減るか
2018/08/06
■ 昼間勤務の確保困難

【問】

当社では交代で深夜に及ぶ勤務シフトがあります。

育児のため深夜業の免除請求があったとき、拒否するつもりはないのですが、昼間の業務が少ないため勤務時間が減り、賃金も減ると不利益取扱いでしょうか。

● 不利益取扱いには該当せず

【答】

小学校就前の子を養育する労働者は、午後10時から午前5時までの深夜労働の拒否を請求できます(育介法19条)。

ただし、配偶者が深夜に就業せず自宅にいるようなときには、事業主は深夜業免除の請求を拒否できます(育介則60条)。

なお、両立指針(平21・厚労省告示509号)は、弾力的な利用が可能となるよう配慮を求めています。

厚労省「育児・介護休業法のあらまし」では、深夜業の制限が適用される労働者について、昼間勤務での就業を希望しており、かつ代わりに就業させることができる同職種の昼間勤務が十分あるにもかかわらず、昼間勤務に就けさせず懲罰的に無給で休業させるといった取扱いは、深夜業の制限の制度の利用を躊躇させるものであり、不利益取扱いに当たるおそれがあるとしています。

昼間の勤務の確保自体は義務付けられておらず、その間無給であることは不利益取扱いには該当しません。

【労災保険法】深夜負傷して起算日いつ?
2018/08/06
■ 2暦日にわたるシフト・・・休業補償給付の待期期間

【問】

当社では、交代制により午後11時から翌朝7時まで、2暦日にまたがる勤務割を組んでいます。

このシフトに所属する従業員が、午後12時過ぎにケガをし、休業することになりました。

3日間の待期期間が満了した後、労災保険の休業補償給付を請求することになりますが、3日間の起算日はいつになるのでしょうか。

● 0時(24時)で分けてカウント

【答】

労災保険の休業補償給付は、「傷病による療養のため労務不能で賃金を受けない日の第4日目」から支給されます(労災法14条)。

最初の3日間は、事業主が労基法に基づく休業補償をする必要があり(労基法76条)、この3日間を待期期間と呼びます。

まず、待期期間カウントの基本を、確認しましょう。

負傷した当日については、「所定労働時間の一部休業の場合のみ休業日数に算入する」という解釈が示されています(昭27.08.08基収3208号)。

たとえば月の初日(1日)の終業時刻後に残業し、午後9時にケガをした場合、翌日(2日)から待期期間をカウントします。

仮に残業が長引き、午後12時を回った後で事故が発生したときも、同様に翌日(2日)が待期期間の起点となります。

しかし、お尋ねのケースでは、午後12時過ぎの事故ですが、所定労働時間内に発生しています。

月の初日と2日にまたがる勤務で、暦日でみれば2日に事故発生の場合、労災保険の請求は4日からでしょうか、5日からでしょうか。

この問題について、3交代制が対象ですが、次のような趣旨の解釈例規があります(昭28.05.07基収1825号)。

「災害は月の初日(1日)の所定労働時間中において発生したので、1日に災害が発生したとみなす」

「暦日によると2日に災害が発生したので、2日から計算する」という2つの見解のうち、後者により取り扱うべきとしています。

ちょっと紛らわしいのが、労働時間の計算です。

同じ3交代制連続作業についてですが、「2暦日にわたる勤務については、継続勤務は暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱うので、始業時刻の属する『1日』の労働と解する」とされています(昭42.12.27基収5675号)。

適用する条文により、解釈に違いがある点には留意が必要です。

【健康保険法】海外の家族も被扶養者?
2018/08/03
■ 本人のみ日本で保険加入

【問】

外国人を雇用する機会が増えていますが、健保の被扶養者のことで質問があります。

本人は日本で健保加入するけれど、家族が引き続き海外に居住するという場合、日本で被扶養者申請ができるのでしょうか。

● 続柄が分かる証明書必要・・・外国語の書面は翻訳文も

【答】

外国人であっても、日本で働く際には、健康保険に加入する必要があります。

ただし、短時間勤務等で加入要件を満たさないとき、社会保障協定(健康保険関連)の対象者であるとき等は除きます。

外国人雇用管理改善指針(平19.08.03厚労省告示276号)では、「労働・社会保険に係る法令の内容および保険給付に係る請求手続き等について、雇入れ時に外国人労働者が理解できるように周知に努めること。また、法令の定めるところにより、適用手続き等必要な手続きを取ること」を要請しています。

被扶養者となるのは、次の2タイプの親族です(健保法3条7項)。

・ 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚含む)、子、孫および兄弟で、主としてその被保険者により生計を維持するもの

・ 被保険者の3親等内の親族で、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

居住地が日本国内か否かは、直接の要件とされていません。

被扶養者(異動)届を提出し、認定を受けることは可能で、年収(原則として本人収入130万円未満)等の基準も同じです。

しかし、日本国内と異なり、親族関係・生計維持関係の証明は簡単ではありません。

このため厚生労働省では、国内に住所を有しない被扶養者の認定に当たり必要書類等に関する解釈例規を示しています(平30.03.22保保発0322第1号)。

被保険者は、まず、被扶養者(異動)届に現況申立書を添付します。

海外居住の家族については、日本国内の公的機関で発行される戸籍謄本や家族証明等の提出は困難です。

この場合、以下の事項に関する書類も提出しますが、外国語で書かれているときは、翻訳者の署名付きの日本語翻訳文を付す必要があります。

@ 身分関係・・・続柄が確認できる公的証明書またはそれに準じる書類

A 生計維持関係

 ・ 収入の確認

   収入があるときは公的機関・勤務先から発行された収入証明書、ないときはそれを確認できる公的証明書またはそれに準じる書類

 ・ 仕送り額等の確認

   被保険者からの送金事実と仕送り事実について、金融機関発行の振込依頼書または振込先の通帳の写し

【労働基準法】期日前投票の指示可能?
2018/08/03
■ 仕事帰りに行くよう徹底

【問】

選挙の際には必ず投票に行くよう社員に呼びかけていますが、徹底させるために就業時間後に期日前投票に行くよう指示してはどうかと考えています。

このような形で労働者を拘束することは、問題があるでしょうか。

● 就業時間内に公民権行使・・・過度に強制するのは無理

【答】

法律では、労働者に「公民権の行使」を保障しています(労基法第7条)。

労働者が就業している時間内に「選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合」には、使用者はこれを拒否することはできません。

「公民としての権利」すなわち公民権の行使とは、国家または地方公共団体の公務に参加する権利のことをいいます。具体的には、首長・議員等の選挙権及び被選挙権のほか、特別法に基づく住民投票等も含まれます。

また裁判の訴権については、労働者が個人的に争っている民事訴訟は公民権に含まれませんが、行政事件訴訟法上の民衆訴訟や、公職選挙法に規定されている選挙人名簿や当選に関する訴訟については公民権の行使に該当するとされています(昭63.03.14基発150号)。

また「公の職務」とは、国会議員や地方公共団体の議員のほか、労働委員会の委員や労働審判員の職務が該当し、選挙においては選挙立会人の職務等が該当します。

民事訴訟や刑事訴訟も含めた裁判における証人や、平成21年から導入された裁判員制度の裁判員も「公の職務」に当たります。

一方、「単に労務の提供を主たる目的とする職務」は同条の公の職務ではないとされており、たとえば予備自衛官が訓練招集に応じる場合などが挙げられています(前掲通達、平17.09.30基発0930006号)。

公民権の行使のために労働者が職場を離脱する場合、有給にするか無給にするかは労使間の当事者で自由に定められるとしています(昭31.11.27基発399号)。

ただし、労基法7条は公民権の行使を「労働時間内」に行うことを規定したものであり、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り時間の変更は可能であっても、終業後の労働時間外にその実施を指令し、就業時間中の請求を拒否することは違法とされています(昭23.10.30基発1575号)。

もっとも選挙は休日に当たる人が多い日曜日に投票が行われることが常であり、当日に投票することを希望している人もいるでしょう。

そのような人にまで期日前投票を強いるのは無理だと思われますし、使用者が労働者を職場から投票に行かせた際に誰に投票したかを聴き取ったり、特定の候補への投票を促すような行為は、内心の自由を保障する憲法19条や秘密選挙を規定する公職選挙法52条等に違反するおそれがあります。

【パート法】同一賃金に抵触するのか
2018/08/03
■ 正社員と異なる通勤手当

【問】

当社では、正社員とパートで、通勤手当の計算方法が違います。

正社員は通勤手当分を支給し、年休等で出勤しない日があっても調整なしです。

一方、パートは出勤日数に応じた実費支給です。総務部内には、「同一労働同一賃金に抵触するのでは」という意見もありますが、どうでしようか。

● 不合理な差が無ければ許容(「一律支給」は注意必要)

【答】

正社員と非正規社員間の格差については、さまざまな法律等で見解が示されています。パート(短時間労働者)については、「通常の労働者との均衡を考慮しつつ、パートの職務内容・成果、意欲、能力、経験等を考慮して賃金を定める」努力義務が課されています(パート労働法10条)。

ただし、同条の対象となるのは、職務関連賃金(基本給、賞与等)のみです。

通勤手当は、「職務の内容に密接に関連して支払われるもの」を除いて、職務関連賃金には当たらないとされています(パート則3条)。

「職務の内容に密接に関連…」する例としては、「現実に要する費用に関係なく、一律の金額が職務関連賃金の一部として支払われている場合」等が挙げられます(平236.07.24雇児発0724第1号)。

一方、有期契約労働者に関しては、「期間の定めがあることにより、無期労働者の労働条件と相違する場合には、職務の内容等を考慮して不合理と認められるものであってはならない」と規定されています(労契法20条)。

通勤手当について正社員等と格差を設けることは、職務の内容、人材活用の仕組みその他の事情を考慮して特段の事情がない限り合理的とは認められないと解されています(平24.08.10基発0810第2号)。

現状は、パートと有期契約労働者で、取扱いに微妙な差があるようです。

この点について、働き方改革実行会議で示された「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」では、「通勤手当について、有期雇用労働者またはパートタイム労働者にも、無期雇用フルタイム労働者と同一の支給をしなければならない」という考え方を提示しています。

ご質問のケースで、パートに対して「日額支給制」を取っているのは週5日フル出勤でないせいと考えられます(フル出勤なら、定期代の方が実費支給より安いはず)。

定期代支給方式を採る場合、出勤日数に関係なく、毎月の本人負担は同額です。しかし、日額支給の場合、交通機関を利用しない日は切符を買う必要もないので、通勤手当を支払わないのは当然といえます。

これは、パート・有期雇用労働者であるがゆえの差別ではなく、職務の内容に応じた合理的な差異とみてよいでしょう。なお、均衡処遇の問題については、働き方改革関連法の整備により、さらに取扱いの明確化が図られる予定です。

【健康保険法】育休復帰後に定時決定か
2018/08/03
■ 「月額変更届」を提出

【問】

標準報酬月額の定時決定ですが、育児休業の取得者について質問があります。5月半ばに職場復帰したので、「育児休業終了時の月額変更届」を提出することになるかと思います。この方は、定時決定の対象になるのでしょうか。

● 7〜9月改定は除外(等級変動なければ基礎届)

【答】

被保険者の標準報酬月額は、入社時(資格取得時)に決定します(健保法42条)。

その後、報酬の水準に若干の変動があっても、資格取得時の標準報酬月額を固定で用いるのが原則です。ただし、報酬の変化を適正に反映するため、次の4種類の改定方法が定められています。

@ 定時決定(健保法41条)

A 随時改定(同43条)

B 育児休業終了時の改定(同43条の2)

C 産休終了時の改定(同43条の3)

@の定時決定は、毎年4月から6月までの報酬月額を基に、9月から1年間の標準報酬月額を定める仕組みです。

事業主は7月1日から10日までの間に、算定基礎届(標準報酬月額の改定に関する届出)を提出する必要があります。

定時決定は被保険者全員が対象ですが、次の3種類の被保険者は除外されます。

1) 6月1日以降の資格取得者

2) 7月1日以前の資格喪失者(6月30日以前の退職者)

3) 7月から9月までのいずれかの月に前記A随時改定、B育児休業終了時の改定、C産休終了時の改定の対象となる者

B育児休業終了時に関しては、「育児休業終了日の翌日が属する月以降の3ヵ月」の報酬支払実績を基に(健保法43条の2第1項)、「育児休業終了日の翌日から起算して2月が経過した日の属する月の翌月」から標準報酬月額が改定されます(同2項)。

お尋ねにある方が、5月半ばに職場復帰したのなら8月が改定予定月となります。

この場合、定時決定の対象から外れますが、仮に変更対象とならなかったときは、その時点で算定基礎届を提出しなければなりません。

【労働基準法】カンパを賃金控除可能か
2018/08/03
■ 任意が穏当とは思うが

【問】

このたびの災害に際し被災地域の各営業所に対し、カンパを送る計画が持ち上がりました。方法として、任意にいくらというのがベターとは思いますが、ごく少額を賃金から一律控除する方法というのは認められないのでしょうか。

● 不合理な差が無ければ許容だが(「一律支給」は注意が必要)

【答】

賃金は、その全額を直接労働者に支払うことが原則です(労基法24条)。その例外として、@ 法令に別段の定めがある場合、あるいは

A 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合、

賃金から一部の金額を控除することが認められています。

労使協定により控除できるのは、社宅や寮の費用などとされています(昭27.09.20基発675号、平11.03.31基発168号)。

A 労使協定を締結するうえで、控除を希望しない者の意思はどうなるのでしょうか。

労使協定の代表的なものとして時間外・休日労働(36)協定があります。使用者として、過半数労組等との協定を労基署に届け出てはじめて適法に時間外労働等を行い得ることになり、協定当事者が第一組合であるときの少数組合員、その他非組合員にも、協定の効力は及ぶことになります。

一方、個々の労働者が、時間外または休日労働命令に従うべき義務があるかどうかは原則として別問題ということになります。

過去の震災において出された厚労省の労基法等に関するQ&Aでは、「労働者が自主的に募金に応じる場合は、一般的にはその労働者が当然に支払うべきことが明らかなものと考えられるため、過半数労組等との書面による協定を締結し、その労働者の賃金から募金額を控除することは可能」として、協定の締結自体は否定していません。

ただし、「労使協定があったとしても、募金に応じる意思がない労働者の賃金から義援金として一律に控除することは認められず、労基法違反」としています。

判例では、労組との間の合意要件の欠如を理由に全額払原則違反を肯定したものに、富士火災海上保険事件(東京地判平20.01.09)があります。労基法24条ただし書き後段(労使協定を締結した場合)の効力は、使用者において同条の全額払いの原則に違反する賃金の支払いがあった場合の刑事罰の免罰としての効力は認められても、多数派組合のほかに少数派組合が併存し、当該少数組合がこれに同意しておらず、かつ、その組合員が個別にも控除の取り扱いに同意していない場合においては、彼ら(少数派組合の組合員)に対してその効力を及ぼすことはできない、としています。

賃金控除協定があれば無条件に控除が認められるわけではないという点に留意が必要でしょう。

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