【労働基準法】4週変形制の割増賃金は?
2017/08/10
■ 賃金計算期間と合わない・・・1年「13サイクル」に

【問】

変形労働時間制を採る場合、清算期間を「4週間単位」にすると、時間外割増等の計算が簡便化されるという記事をみました。

しかし、賃金の締切は1ヶ月―回ですから、そちらとの整合性が問題になります。

4週間単位の変形制を運用する際、月をまたがって発生した割増賃金は、どのように支払うべきなのでしょうか。

● 直後の支払日で清算

【答】

1ヶ月単位変形労働時間制(労基法32条の2)は、「1ヶ月以内の期間」で変形期間を設定します。

ですから、4週間単位ももちろん可能です。

休日との関係では、1週1日ではなく「4週4日の変形休日制」が認められているため(労基法35条2項)、両者の併用は有力な選択肢です。

しかし、変形期間が1ヵ月に満たないため、ご質問にあるとおり、賃金計算面で齟齬が生じます。

365日を4週間(28日)で除すと、13.035…ですから、1年の中に約13回のサイクルが含まれることになります。

「月をまたぐ割増賃金」は、通常の労働時間制にもつきまとう問題です。

月の最終日が金曜の月を、例に取り上げましょう。

金曜日の業務終了の時点で急ぎの仕事が残っていたため、土曜日に出勤させたとします。

2つの月にまたがる「週単位(日曜から土曜)」でみれば、労働時間の累積は48時間(8時間×6日)ですから、法定労働時間枠40時間を超えた8時間が時間外となります。

これは、すべて「後の月」の時間外として処理し、割増賃金が支払われます。

考え方は、「時間外労働として確定した時点」が、どの月に属するかに基づいて判断するというものです。

1年単位変形制についてですが、「変形期間を通じた法定労働時間の総枠を超える労働時間に係る割増賃金については、一般的に変形期間終了時点で初めて確定するものであり、変形期間終了直後の賃金支払期日に支払えば足りる」という解釈例規が存在します(平06.05.31基発330号)。

4週変形制を採るときも、1日・1週・4週単位の3回に分けて時間外労働等の発生の有無をチェックします。

1年に1回は「4週単位の締め」が同一月内に2回ある月が発生しますが、当月支払いで問題ありません。

【労災保険法】事務室内で熱中症?
2017/08/10
■ 「暑熱な場所」と関係は

【問】

事務作業の従業員が、熱中症の発症を訴え労災請求したいといいます。

会社としては協力するとして、暑熱な場所はどう解釈するのでしょうか。

● 28度以下に温度を保つ

【答】

業務上の疾病の範囲は、労基則に定めがあります。

熱中症に関する「暑熱な場所」(労基則別表1の2第2号8項)とは、一般的に体温調節機能が阻害されるような温度の高い場所における夏季の屋外労働、炉前作業等が考えられます(昭53.03.30基発186号)。

事業場内で作業中に熱中症に罹患したとして、療養補償給付および休業補償給付を請求したところ不支給とされた事案で、労働保険審査会が再審査請求を棄却(業務外)した裁決例があります。

裁決では、当時の室温は28度程度と推定し、暑熱な場所ではないとしました。

「17度以上28度以下」としている事務所則5条3項は努力義務規定ですが、留意が必要でしょう。

軽作業であり、服装も通気性が悪いとは認められないことも考慮しています。

裁決では業務起因性の判断と直接関係がないとしていますが、熱中症の予防に関する通達(平21.06.19基発0619001号)は、職場の労働衛生管理の指針となります。

【健康保険法】「総報酬割」とは何か
2017/08/10
■ 介護保険で今夏より導入

【問】

会社の健保組合から、介護保険料が「総報酬割」になるといわれました。

聞き慣れない言葉ですが、どんな制度なのでしょうか。

● 保険者間の負担を調整

【答】

今年6月に公布された改正介護保険法は、高齢者等が自立した生活を送れるシステムを地域で構築する「地域包括ケア」の強化法といわれていますが、同時に保険者の機能を強化して制度を持続させる目的もあると説明されています。

40歳から64歳までの健康保険の被保険者は、介護保険法の「第2号被保険者」となり、健康保険料と同様に報酬から保険料を徴収されます。

従来、健康保険の保険者が負担する介護納付金の総額は、保険者である協会けんぽおよび各健保組合に加入する被保険者の人数に応じて按分していたため、いずれの保険者についても被保険者一人当たりの介護保険料を平均すると、原則「横並び」となっていました。

しかし被用者保険等を対象に、8月から段階的に導入が始まった「総報酬割」は、各保険者の全加入者の標準報酬の総額に応じて納付金を按分するので、被保険者の報酬の総額が多い保険者では、保険料の平均額も高くなります。

制度全体では、被保険者の収入額が比較的少ない国民健康保険の介護納付金について、負担が軽減されるようになっています。

【労働基準法】出勤直前に休日振替できるか?
2017/08/07
■ 土曜出勤する必要あり・・・急な変更命令の問題点

【問】

労組役員を担当していますが、組合員から次のような苦情を受けました。

金曜日の朝、自宅で出勤準備中に上司から電話があり、「搬入予定の機器が到着しないので、作業日を土曜に変更したい。

ついては、本日を振替休日とする」と告げられたということです。

「こうした急なスケジュール変更はできる限り避けるように、会社に申し入れてほしい」といいますが、どう対応すべきでしょうか。

● 前日まで本人へ通知を

【答】

ご質問にある上司はスケジュール変更の必要性に応じるため、「振替」という対応を選択されました。

貴社の土曜日は所定休日ですが、大多数の会社の就業規則では、「業務上の必要があるときは、休日を振り返ることがある」等の規定を設けています。

振替を選択することにより、本来の休日が労働日となり、「労基法上の休日労働のための労使協定(36条)や割増賃金(39条)を要しない」というメリットを受けられます。

ただし、「休日振替」というためには、満たすべき要件があります。

就業規則上に根拠を設けるほか、

@4週4日の休日を確保するとともに、

Aあらかじめ振替日を指定する必要があります。

@の4週4日は、労基法35条(1週1日の休日、変形週休制を採る場合はそれに従った休日)に基づくものです。

週休2日制を採り、同一週で他に休日が与えられていれば、配慮は不要です。

Aの「あらかじめ」とは「事前の指定」という意味ですが、この点について、「前日の勤務時間終了まで」という見解が示されています(安西愈「労働時間・休日・休暇の法律実務」)。

振替の通告が遅れると、休日に指定された日を「本来の休日として十分に利用できない」という問題が生じます。

就業規則上に根拠規定があっても、振替の指定は「振替を必要ならしめる事由が生じたのち遅滞なく、労働者の生活設計に配慮して行われるべき」(菅野和夫「労働法」)とされています。

こうした点に照らすと、今回の対応は配慮を欠いたといわざるを得ません。

今後は、金曜当日の振替は避け、翌週のいずれかの日を休日として指定する(それにより週40時間を超えれば時間外割増が必要ですが。昭63.03.14基発150号)といった配慮を求めるべきでしょう。

【健康保険法】限度額認定証を返すか
2017/08/07
■ 高額療養費で負担軽減

【問】


高額療養費について、病院の窓口負担を軽減するには、事前の認定が必要といいます。

認定証は返還が必要でしょうか。

退職時に返還すればいいのでしょうか。

● 1年以内に返納・回収

【答】

病院や薬局の窓口で支払う自己負担額が、暦月単位で一定額を超えた場合に、超えた金額を支給するのが高額療養費(健保法115条)です。

受給方法として、保険者に対し、事後に申請書を提出する方法(健保則109条)と、事前に認定を受ける方法(同則103条の2)の2つがあります。

ご質問は、限度額適用認定証の交付を受けるケーススです。

そして一定の場合には、遅滞なく、限度額適用認定証を保険者に返納しなければなりません(健保則103条の2第3項)。

たとえば、被保険者の資格喪失時(1号)や被扶養者がその要件を欠くに至ったとき(3号)、所得区分に変更があったとき(4号)があります。

そして、限度額適用認定証の有効期限に至ったとき(5号)があります。

有効期限は、申請書を受け付けた日の属する月の1日(資格取得月の場合は資格取得日)から最長1年です(平19.03.07保保発0307001号)。

保険者側も、速やかに回収する(前掲通達)としています。

【厚生年金法】子の遺族年金どうなる
2017/08/07
■ 離婚した元夫が養育

【問】従妹にSOHOで働きながら子育て中のシングルマザーがおり、先日遺族年金の話が出ました。

「仮に自分が死んだら現在中学生の子どもに年金が支給されるはずだが、その後に離婚した元夫が子どもを引き取った場合、年金は元夫が受け取ることになるのだろうか。親族等の養子になった場合はどうなのか」といっていたのですが、どのように考えたら良いのでしょうか。

● 生計同一で支給停止に

【答】

遺族基礎年金は妻が死亡した夫に対しても、一定の要件を満たせば支給されますが(国年法37号)、離婚により夫のいない妻が死亡した際に18歳未満の子がいると、子に受給権が発生します。

その後に元夫が子を引き取っても、元夫に受給権が移ることはありません。

ただ、それにより子が元夫と同居し生計を維持されると、年金の支給が停止されます。

両親が離婚して夫婦関係が解消し、母親が子の親権を取得していた場合でも父親と子の親子関係は解消しないため、「生計を同じくするその子の父」がいる場合に該当するからです(同法41条2項)。

仮に他者と養子縁組をすると実の親子と同じ扱いになり、直系の血族や姻族が養親の場合を除いて子の受給権は消滅します(同法40条1項)。

消滅しない場合でも、養親と生計が同一だと支給停止になります。

【労働基準法】休日の振替も不可?
2017/08/04
■ 1年単位の変形労働

【問】

1年単位の変形労働時間制で、真夏に休日を週1日とする特定期間を設けています。

この間も特に繁忙をきわめる時期が数週間あり、アクシデント等で連日業務に当たらざるを得ないこともあります。

変形労働時間制は運用面の制約が多いようですが、休日を振り替えることもできないのでしょうか。

● 特定期間中は連続12日まで

【答】

1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)は、対象期間の開始前にあらかじめ労働日と労働日ごとの労働時間を具体的に定めることが要求され、使用者が業務の都合で労働日や労働時間を任意に変更したり、繁忙期にあたる「特定期間」を途中で変更することは原則できないとされています(平06.01.04基発1号、平11.01.29基発45号)。

趣旨に鑑みると休日の振替もできないように思われますが、就業規則等に根拠規定を置いたうえで、特定期間を除く対象期間は連続労働日数が6日以内、特定期間は「1凋間に1日」の休日を確保することを条件に振替ができるとしています(平11.03.311基発168号)。

特定期間においては、たとえば1週目の初日と2週目の末日を休日として、最長12日まで連続勤務となる振替が可能ということになります。

【労働基準法】1日8時間未満でも割増?
2017/07/25
■ 1ヵ月変形制を採用・・・所定労働時間超えた部分

【問】

出向発令により、関連会の人事部門を担当することになりました。

元々は独立系の会社で、人事制度でも異なる点が多々あります。

せっかく1ヵ月単位変形労働時間制度を採っているのに、所定労働時間を超えた分はすべて割増賃金の対象にしています。

会議等の場で議論したらどうかと思うのですが、他社でも、こうした取扱いをする例があるのでしょうか。

● 総枠超え見越して計算

【答】

変形労働時間制は、所定労働時間の効率的な配分により、実労働時間全体の圧縮を図る仕組みです。

単位期間内の週平均労働時間が40時間以内であれば、日・週単位で法定枠を超えても割増賃金の支払いを要しません。

1ヵ月単位変形制で、割増の対象となる時間は次のとおりです(昭63.01.01基発1号)。

@ 1日の所定労働時間を8時間超としている日はその時間、それを除いては8時間を超えた時間

A 1週の所定労働時間を40時間超としている週はその時間、それを除いては40時間を超えた時間(@の時間を除く)

B 変形期間の法定枠を超えた時間(@Aの時間を除く)

話を単純化して、4週単位の例を示します。

1週目は1日7時間、2・3週目は1日8時間、4週目は1日9時間という時間設定を行ったとします。

業務上の都合で1週目に毎日1時間ずつ残業させても、8時間(@で定める「それ以外の日」の要件)を超えないために、割増賃金は不要です。

しかし、そのまま調整せずに所定労働時間を全て労働させると、4週の労働時間合計は165時間(1〜3週は1日8時間労働、4週は9時間労働)となります。

一方、法定枠は160時間(40時間×4週)ですから、通達のBの要件により、超過した5時間分の割増が必要になります。

@で節約した5時間分を、Bですべて「吐き出す」形となります。

先に@で割増を支払ってしまえば、Bの清算は要しません。

常に差引きゼロとは限りませんが、実際には相当部分が相殺の対象となります。

ですから、事務の簡便化を考慮して「所定労働時間を超過した分は割増の対象」と定める企業も散見されるようです。

従業員のやる気という面も含め、いずれの清算方法が有利か、議論されてはいかがでしょうか。

【労働者災害補償保険法】退職者を一人親方に?
2017/07/25
■ 労災保険の特別加入

【問】

工場の作業員が退職しますが、引き続き一部作業を請負として担当してもらおうと考えています。

「一人親方」として労災保険で特別加入できないでしょうか。

● 製造業は加入不可

【答】

労災保険が保護するのは、原則的には、適用事業で働く「労働者」です。

労災法上、労働者の定義は存在しませんが、「労基法に規定する労働者と同一のものをいう」と解されています(労災法コンメンタール)。

労災保険では、この労働者の定義に該当しなくても、労働者に準じて保護が必要な人を対象として、特別加入を認めています(法33条)。

中小事業主、一人親方、海外派遣者などがあります。

ただし、契約形態にかかわらず、実態として使用関係にあれば、労働者とみなされます。

一人親方は、「労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする」ことが要件です(労災法33条3号)。

「労働者を使用する日の合計が1年において100人未満と見込まれる」状態をいいます(昭40.11.15基災発18号)。

一人親方に関しては、特別加入の対象となる事業の範囲が限定されています(労災則46条の17)。

一般的なのは建設業です。

その他運送事業等もありますが、製造業は含まれていません。

【労働基準法】「辞職願」の効力は
2017/07/14
■ 懲戒処分を検討中だが

【問】

業務上の不正が疑われる従業員がいて、まず事情聴取を行う予定でした。

しかし、本人が先手を打って「辞職願」を提出してきました。

当社規定では「届出を提出して14日を経過したとき」退職となる旨、定めています。

しかし、「辞職は、会社が退職の可否を検討する余地がない」という理由で、即日退職を求めています。

本人のいい分を認めるべきなのでしょうか。

● 14日後に解約効力生じる

【答】

辞職とは、労働者が一方的に労働契約を解約するものです。

依願退職は従業員が退職を「願い出る」もので、通常は合意解約の申出とみなされます。 辞職願は原則的に撤回不能ですが、退職願は「使用者の承諾の意思表示がなされるまでは撤回できる」と解されています。

退職(辞職・合意解約)は解雇に当たらないので、30日前の予告を定める労基法20条の適用はありません。

ですから、両者合意のうえで、即日解約もできます。

一方、民法では、期間の定めのない雇用は「解約の申し入れがあった日から2週間を経過することによって終了する」と規定しています(627条1項)。

合意解約の退職願が提出された場合、会社は理由の確認や慰留等を行ったうえで、最終的に承認の決定を行います。

しかし、この「2週間」の制限を超えて承認を遅らせることはできません。

これに対して、辞職願は「話し合いの余地はない」のですが、だからといって「承認までの2週間は不要」という理屈は成り立ちません。

辞職願が撤回不能とは、「相手方への意思表示の到達により、解約告知としての効力(2週間後に解約となる効力)が直ちに発生する」という趣旨です(荒木尚志「労働法」)。

一般論としては、「2週間の引き留め」が可能です。

日程的には厳しいですが、調査を急ぎ、懲戒処分を科す余地も残されています。

実務的には、本人が次の就職先を確保し、「明日から転職したい」と要求するケースもあり得ます。

使用者が即日解雇できる(除外認定を受ける)事由として、「他の事業場へ転職した場合」が挙げられています(昭23.11.11基発1637号)。

しかし、こちらも予告手当等が不要という意味で、逆に従業員から「即日解雇を要求」できる筋合いではありません。

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