【健康保険法】被扶養者の要件どう改正
2019/12/19
■ 外国人労働者の増加で

【問】

外国人労働者の増加等を踏まえ、健保の被扶養者要件が改正されると聞きます。

新しい要件は、外国人労働者の国籍等が関係するのでしょうか。

今回の改正以前から、長い間、家族と一緒に日本で住んでおられる方など、どのような扱いになるのでしょうか。

● 「国内居住要件」が加わる

【答】

日本人にも原則適用あリ健保の被扶養者に関する定義は、健保法3条7項に定められています。

基本パターンは、2種類です。

 @ 被保険者の父母、祖父母などの直系尊属と配偶者、子、孫、兄弟姉妹

   主として被保険者により生計を維持していることが要件です(生計維持要件)。

 A 上記以外の3親等以内の親族等

   被保険者と一緒に生活し、主として被保険者により生計を維持していることが要件です(同居要件十生計維持要件)。

現在(改正前)、外国人であっても、一定要件を満たせば、健保の被保険者・被扶養者となれるのは、ご存じのとおりです。

しかし、令和元年5月に公布された改正健保法により、被保険者の要件として、下記が追加されました。

施行は、令和2年4月1日です。

* 日本国内に住所を有するもの、または日本国内に生活の基礎があると認められるものであること

新しく追加された要件は、直接、国籍等には触れていません。

ですから、外国人労働者の家族であっても、一緒に来日し、「日本国内に住所」を有していれば、従来どおり、被扶養者の要件を満たすので、心配の必要はありません。

一方、外国人労働者が、海外に家族を残してきた場合、現在は被扶養者として届出が可能です。

しかし、改正法の施行後は、被扶養者として認められなくなります。

さらに、国籍に関する規定がないということは、日本人にも効果が及ぶということになります。

日本人の家族であっても、海外に出て、日本国内に住所がなくなれば、原則として被扶養者の要件を満たさなくなります。

ただし、機械的にこのルールを適用すると、いろいろな問題が生じます。

このため、「日本国内に生活の基礎がある」ときは、被扶養者として認める例外を設けました。

具体的には、以下のケースが列挙されています(健保則37条の2)。

 イ 外国において留学をする学生

 口 外国に赴任する被保険者に同行する者

 ハ 観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者

 二 被保険者が外国に赴任している間に被保険者との身分関係が生じた者

 ホ その他、渡航目的その他を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者

【労働基準法】届出はいつまでに
2019/12/18
■ 就業規則変更したとき

【問】

就業規則を変更し、過半数代表者の意見聴取を経た結果、現在微調整を検討しております。

就業規則の施行日が迫っており、仮に施行予定日を超過して労働基準監督署へ届出をする事態となった場合、施行日を変更する必要があるのでしょうか。

また、提出期限に関する規定は法律などに設けられているのでしょうか。

● 「遅滞なく」だが早めで

【答】

合理的な理由がない限り、なるべく早めに届出をするべきでしょう。

労基法89条は、就業規則の作成、変更時に、行政官庁への届出を義務付けており、関連する労基則49条―項では、「遅滞なく届出を所轄労働基準監督署長にしなけれぱならない」としています。

つまり、具体的な日数は示されていません。

「遅滞なく」は、労基法に関する判断ではないものの、時間的即時性を表す法令用語として用いられ、「正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解されている」(大阪高判昭37.12.10)とした判例があります。

就業規則の効力要件としては、行政官庁への届出までは必要とせず、労働者への周知で発生するとしています(労基法コンメンタール)。

その時期は、周知後において、規定された施行日があれば施行日、ない場合は周知されたときとしています。

【パート法】同一労働同一賃金・・・比較する対象は誰か
2019/12/18
■ 『正社員間にも格差が』・・・均等・均衡待遇達成の判断

【問】

パート労働法が再編されパート・有期雇用労働法に変わりますが、「同一労働同一賃金」について疑問があります。同じ正社員同士でも、待遇には大きな「格差」が存在するはずです。

どの正社員と比較するかで、均衡待遇が達成されているか否か、大きく判断が左右されますが、比較対象はどう選べば良いのでしょうか。

● 職務など最も近い労働者

【答】

パート・有期雇用労働法8条では短時間労働者の待遇に関する原則を定めていますが、その趣旨は「同一事業所に雇用される通常の労働者や職務の内容が同一の通常の労働者だけでなく、その雇用するすべての通常の労働者との間で、不合理な待遇の相違を禁止したものである」と解されています(平31.01.30職発0130第1号)。

一方、14条では、パート・有期雇用労働者に対して講ずる「雇用管理の改善等の措置内容」の説明義務を課しています。

2項では、本人から求めがあったときは、待遇の相違の内容・理由等も説明しなければならないと定めています。

その際には、現実問題として、「すべての通常の労働者」ではなく、一定範囲の比較対象を特定する必要があります。

この点について、「パート・有期雇用労働指針」(平19.10.01厚労省指針326号、平30.12.28改正)では、事業主が「職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)等が、パート・有期雇用労働者と最も近いと判断する通常の労働者」を選択するとしています。たとえば、職務の内容・人材活用の仕組みが同じ通常の労働者がいなければ、職務の内容が同じ通常の労働者が「最も近い」労働者となります。

職務の内容が同じ通常の労働者がたくさんいれば、さらに基本給の重要な決定要素・同一事業所勤務かどうか等も考慮したうえで、次のような対象を選びます(前掲通達)。

@ ―人の通常の労働者

A 複数人または雇用区分

B 過去1年以内に雇用していた1人または複数人

C 標準モデル(新入社員、勤続○年の一般職など)

事業主は、選定の理由も説明する必要があります。

ただし、個人情報の保護の観点から、「明らかに誰かが特定できる(たとえば、机を並べた隣の正社員)」のような選択は避けるべきとされています。

【労働基準法】同一月内の振替で不十分か?
2019/08/06
■ 1ヵ月変形採る事業場・・・週と月でチェックを

【問】

訪問先の社長さんですが、休日の振替に関して意見の食い違いが生じています。

「同一週内の振替に限り、割増不要」という説明をしたところ、「当社は1ヵ月変形制を採っているんだから、同一月内で振り替えれば足りるはず」と主張して譲りません。

1ヵ月変形制だからといって特例はないと思いますが、どのように説明すべきでしょうか。

■ 月またぐとき注意必要

【答】

社長さんは基本的に勘違いされていますが、貴殿としては相手の論点にも配慮した丁寧な回答を心がけたいところです。

議論の前提として、「同一週内の振替」について、確認しましょう。

解釈例規では「振替により週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間について割増賃金の支払が必要」とされています(昭22.11.27基発401号)。

同一週内で振り替えれば、週の労働時間総計は変わりません。

しかし、週をまたぐと、休日が労働日に変更された週について、労働時間が法定労働時間を超える可能性があります(その週の所定労働日が1日増えるため)。

通常の労働時間制では1日と週単位で時間外労働の有無を確認するので、話はこれで終わりです。

しかし、1ヵ月単位変形労働時間制では、次の3パターンで時間外が発生します(昭63.01.01基発1号)。

@ 1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

A 1週間については、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(@の時間除く)

B 変形期間については、その期間の法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(@Aの時間除く)

ですから、1ヵ月変形制でも、通常の労働時間制と同様に週単位でのチェックを要します(週をまたぐときは注意)。

さらに、月(変形期間)をまたいで振替を行えば、月単位の所定労働日数に変動が生じます。

出勤日が増えた月に関しては、「振替により、労働時間がその期間の法定労働時間の総枠を超えるか否か」も確認が求められます。

そういう意味では、社長さんの言にあるとおり、「同一月内の振替」という観点も欠くことができないといえます。

【労働基準法】「夏休み」に年休前倒し??
2019/08/06
■ 入社6ヵ月以前の社員・・・計画付与で一斉付与を予定

【問】

「働き方改革関連法案」では、年休の付与義務強化もうたわれているようです。

当社では、年休の計画的付与の利用を検討していますが、新規入社者の取扱いで質問があります。

夏休み(入社6力月以前)に計画付与する場合、新入社員の年休はまだ発生していません。この場合、後から付与される年休の一部を「前渡し」で消化させるといった対応が可能なのでしょうか。

● 5日超の繰上げが必要

【答】

現行法では、年休の取得方法として

@ 本人の時季指定と

A 計画的付与の2種類・・・が定められています。

改革関連法では、

B 使用者による時季指定(5日分)・・・を追加する予定ですが、@Aにより取得した分は 「5日」から差し引き可能です。

A 計画的付与を実施する際に、新入社員を対象として「前倒し」付与できないかというご質問ですが、関連する解釈例規をチェックしましょう。

まず、昭29.06.29基発355号では「継続6ヵ月間の期間満了前に年休を与えることは、何ら差し支えない」と述べています。

それでは問題解決かというと、検討すべき点が残っています。

「前倒し」の具体策として、将来発生する年休の一部を「分割付与」する方式が考えられます。

この点について、解釈例規では「4月入社者に対して同日付で5日を付与し、10月に5日付与するとしている場合、入社時に付与した5日について、夏季に計画付与できるか」という質問例を示しています(平06.05.31基発330号)。

回答は「不可」ですが、その理由として「計画的付与は5日を超える部分が対象になる」点を挙げています。

それでは、夏季休暇の時季に10日分を全部与えてしまうのはどうでしょうか。

付与日を前倒し処理する際は、「次年度以降の年休の付与日についても、初年度に法定の基準日から繰り上げた期間と同じ、またはそれ以上の期間繰り上げる」必要があります(平06.01.04基発1号)。

夏季に年休の使用を開始すれば、その日が「年休付与の基準日」となります。

1日分だけ「前借り」し、同年10月1日に「正式に年休が発生」し、翌年度以降も10月1日を基準日とするような運用は認められない点に留意が必要です。

【雇用保険法】自己都合の退職扱い?
2019/08/06
■ 長時間残業あり離職

【問】

時間外労働の上限規制が話題です。

月100時間未満、複数月平均80時間を限度とすることなどが示されているようですが、現在、時間外労働を理由に退職したときに、失業給付はどうなるのでしょうか。

● 月45時間超で上乗せも

【答】

労基法の時間外の上限規制は、平成31年4月(中小は令和2年4月)から施行されました。

時間外労働時間の上限は、月45時間、年360時間を原則とし、ご質問の月100時間未満等は、特別の事情がある場合の「例外」となります。

雇用保険ですが、離職の理由により、特定受給資格者等としていわゆる失業手当の日数が変わってきます。

現行においても、長時間残業を理由に所定の給付日数が上乗せされる可能性があります (雇保則36条)。

離職の日の属する月の前6ヵ月のうち、―力月100時間超、または2ヵ月連続で80時間超の時間外労働が行われた場合のほかに、連続する3ヵ月に月45時間超の時間外労働が行われたことも該当するとしています(雇用保険業務取扱要領)。

こちらの時間数は、限度基準告示が根拠とされています。

今後、雇保則の文言だけでなく要件の見直しもあり得るということになります。

【障害者雇用納付金用】法定率達成で報奨?
2019/08/06
■ 障害者雇用の推進施策

【問】

法定雇用率を超える人数の障害者を雇用すると、インセンティブがあると聞きました。

どのような制度なのでしょうか。

● 調整金支給の制度あり

【答】

障害者の法定雇用率が今年4月に引き上げられ、民間企業は2.2%、国や地方公共団体は2.5%、都道府県等の教育委員会は2.4%となりました。

3年後までにはさらに0.1%の引上げが予定されています。

法定雇用率を達成できないと、常時雇用する労働者が100人を超える事業主は不足する人数1人につき月額50,000円(労働者数200人以下は40,000円に減額の特例あり)の障害者雇用納付金を納付しなければなりませんが(障雇法53条)、逆に法定雇用率を上回る人数の障害者を雇用した場合には、事業主に対して障害者雇用調整金等を支給する制度もあります(同法50条)。

労働者数100人を超える事業主が法定雇用率を超えて障害者を雇用すると、当該超えた人数に応じて1人当たり月額27,000円の調整金が支給されます。

納付金の対象でない100人以下の事業主にも、一定数を超えて障害者を雇用すると超えた人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されます。

また在宅で就業する障害者の雇用でも、調整金・報奨金が支給される制度が設けられています。

【健康保険法】税とどう異なるか
2019/08/05
■ 扶養家族の要件など

【問】

家族の「扶養」について、社会保険料と税金で扱いが違うため、頭の整理がつかずに困ることがよくあります。

配偶者に関する年収要件は、健康保険と所得税でそれぞれ「130万円」と「103万円」ということは知っていましたが、年収以外にも異なる点があると聞いています。

具体的にはどのような点が挙げられるのでしょうか。

● 親族の範囲にも相違点

【答】

健康保険の被扶養者となるには年収「130万円未満」が要件です。

ただし、労働者数500人を超える企業等で106万円以上の年収があると、本人が加入する必要が生じる場合があります。

一方、所得税の扶養親族である配偶者を対象とした配偶者控除は原則「103万円以下」ですが、今年から世帯主の年収額で制限されたり、150万円以下だと同額の配偶者特別控除を受けられ
る等の改正がされています。

これ以外にも相違点があり、健保法の被扶養者は原則3親等以内の親族までですが、所得税法では民法に準じ6親等内の血族と3親等内の姻族も対象になっています(健保法3条7項2号、所得税法2条34号ほか)。

また配偶者のうち前者は事実婚でも該当しますが、後者は該当しません。

その他にも、健康保険では通勤手当を年収に含めますが、所得税では一定額まで非課税として含めないという違いなどがあります。

【健康保険法】前納分は返還されるか
2019/08/02
■ 任継の途中で被扶養者

【問】

半年前に退職し、健康保険は任意継続被保険者となって保険料の1年分を前納しました。

この度結婚することになり、相手がサラリーマンなので健康保険の被扶養者になれることが分かりました。

この場合、任意継続被保険者から切り替わり、前納した保険料を返還してもらうことはできるのでしようか。

● 資格喪失要件に含まれない

【答】

適用事業所を退職し、任意継続被保険者(健保法3条4項)になると、毎月10日までに協会けんぽや健保組合に保険料を納付する必要がありますが(同法164条)、半年分または1年分を前納することも可能です。

納付忘れを防ぎ、料金が割り引かれる利点もあります。

任意継続被保険者である期間の途中で自由な脱退は原則できません。

再就職し新たに健康保険の被保険者になると任意継続被保険者の資格を喪失しますが、被保険者である家族の被扶養者になったことは資格喪失の要件(同法38条)に挙げられていません。

前納した保険料のうち経過していない期間についての返還も認められないでしょう。

ただし、任意継続被保険者が保険料を納付しない場合も資格を喪失するので、既に納付済みの1年が経過した後、次の1年間の保険料を納付しなければ、資格を喪失することとなります。

【労働基準法】残業中も休憩必要?
2019/07/19
■ 社員は早い帰宅を望む

【問】

所定労働時間が7時間で休憩時間を45分に設定しています。

最近、一部の社員に恒常的な残業が生じている事態が発覚し、残業が1時間を超えると15分休憩を付与しなければいけない旨を伝えたところ、早く帰りたいので残業中の休憩は取りたくないというのですが、こうした要望を認めて良いでしようか。

● 希望受けると使用者違法に

【答】

使用者は、労働者の労働時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩時間を与えなければなりませんが(労基法34条1項)、これは所定労働時間ではなく、実際に労働した時間に基づいて課せられる義務で、残業により8時間を超えたときは1時間の休憩時間が必要です(昭23.11.27基発41号)。

休憩時間の分割は可能で、残業中に不足する15分を追加で付与することは違法になりません。

ただし、休憩を労働時間の「途中」ではなく始業前や就業後に付与することは認められません。

そのため休憩を取らずに残業を続けたいという労働者の希望を受け入れると、使用者の措置が違法となってしまいます。

使用者としては、追加の休憩を要する残業を一定の日に纏めたり、担当業務の割振りを工夫してできるだけ定時に帰れるようにするなどの対策を講じるべきでしょう。

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