【健康保険法】海外の家族も被扶養者?
2018/08/03
■ 本人のみ日本で保険加入

【問】

外国人を雇用する機会が増えていますが、健保の被扶養者のことで質問があります。

本人は日本で健保加入するけれど、家族が引き続き海外に居住するという場合、日本で被扶養者申請ができるのでしょうか。

● 続柄が分かる証明書必要・・・外国語の書面は翻訳文も

【答】

外国人であっても、日本で働く際には、健康保険に加入する必要があります。

ただし、短時間勤務等で加入要件を満たさないとき、社会保障協定(健康保険関連)の対象者であるとき等は除きます。

外国人雇用管理改善指針(平19.08.03厚労省告示276号)では、「労働・社会保険に係る法令の内容および保険給付に係る請求手続き等について、雇入れ時に外国人労働者が理解できるように周知に努めること。また、法令の定めるところにより、適用手続き等必要な手続きを取ること」を要請しています。

被扶養者となるのは、次の2タイプの親族です(健保法3条7項)。

・ 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚含む)、子、孫および兄弟で、主としてその被保険者により生計を維持するもの

・ 被保険者の3親等内の親族で、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

居住地が日本国内か否かは、直接の要件とされていません。

被扶養者(異動)届を提出し、認定を受けることは可能で、年収(原則として本人収入130万円未満)等の基準も同じです。

しかし、日本国内と異なり、親族関係・生計維持関係の証明は簡単ではありません。

このため厚生労働省では、国内に住所を有しない被扶養者の認定に当たり必要書類等に関する解釈例規を示しています(平30.03.22保保発0322第1号)。

被保険者は、まず、被扶養者(異動)届に現況申立書を添付します。

海外居住の家族については、日本国内の公的機関で発行される戸籍謄本や家族証明等の提出は困難です。

この場合、以下の事項に関する書類も提出しますが、外国語で書かれているときは、翻訳者の署名付きの日本語翻訳文を付す必要があります。

@ 身分関係・・・続柄が確認できる公的証明書またはそれに準じる書類

A 生計維持関係

 ・ 収入の確認

   収入があるときは公的機関・勤務先から発行された収入証明書、ないときはそれを確認できる公的証明書またはそれに準じる書類

 ・ 仕送り額等の確認

   被保険者からの送金事実と仕送り事実について、金融機関発行の振込依頼書または振込先の通帳の写し

【労働基準法】期日前投票の指示可能?
2018/08/03
■ 仕事帰りに行くよう徹底

【問】

選挙の際には必ず投票に行くよう社員に呼びかけていますが、徹底させるために就業時間後に期日前投票に行くよう指示してはどうかと考えています。

このような形で労働者を拘束することは、問題があるでしょうか。

● 就業時間内に公民権行使・・・過度に強制するのは無理

【答】

法律では、労働者に「公民権の行使」を保障しています(労基法第7条)。

労働者が就業している時間内に「選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合」には、使用者はこれを拒否することはできません。

「公民としての権利」すなわち公民権の行使とは、国家または地方公共団体の公務に参加する権利のことをいいます。具体的には、首長・議員等の選挙権及び被選挙権のほか、特別法に基づく住民投票等も含まれます。

また裁判の訴権については、労働者が個人的に争っている民事訴訟は公民権に含まれませんが、行政事件訴訟法上の民衆訴訟や、公職選挙法に規定されている選挙人名簿や当選に関する訴訟については公民権の行使に該当するとされています(昭63.03.14基発150号)。

また「公の職務」とは、国会議員や地方公共団体の議員のほか、労働委員会の委員や労働審判員の職務が該当し、選挙においては選挙立会人の職務等が該当します。

民事訴訟や刑事訴訟も含めた裁判における証人や、平成21年から導入された裁判員制度の裁判員も「公の職務」に当たります。

一方、「単に労務の提供を主たる目的とする職務」は同条の公の職務ではないとされており、たとえば予備自衛官が訓練招集に応じる場合などが挙げられています(前掲通達、平17.09.30基発0930006号)。

公民権の行使のために労働者が職場を離脱する場合、有給にするか無給にするかは労使間の当事者で自由に定められるとしています(昭31.11.27基発399号)。

ただし、労基法7条は公民権の行使を「労働時間内」に行うことを規定したものであり、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り時間の変更は可能であっても、終業後の労働時間外にその実施を指令し、就業時間中の請求を拒否することは違法とされています(昭23.10.30基発1575号)。

もっとも選挙は休日に当たる人が多い日曜日に投票が行われることが常であり、当日に投票することを希望している人もいるでしょう。

そのような人にまで期日前投票を強いるのは無理だと思われますし、使用者が労働者を職場から投票に行かせた際に誰に投票したかを聴き取ったり、特定の候補への投票を促すような行為は、内心の自由を保障する憲法19条や秘密選挙を規定する公職選挙法52条等に違反するおそれがあります。

【パート法】同一賃金に抵触するのか
2018/08/03
■ 正社員と異なる通勤手当

【問】

当社では、正社員とパートで、通勤手当の計算方法が違います。

正社員は通勤手当分を支給し、年休等で出勤しない日があっても調整なしです。

一方、パートは出勤日数に応じた実費支給です。総務部内には、「同一労働同一賃金に抵触するのでは」という意見もありますが、どうでしようか。

● 不合理な差が無ければ許容(「一律支給」は注意必要)

【答】

正社員と非正規社員間の格差については、さまざまな法律等で見解が示されています。パート(短時間労働者)については、「通常の労働者との均衡を考慮しつつ、パートの職務内容・成果、意欲、能力、経験等を考慮して賃金を定める」努力義務が課されています(パート労働法10条)。

ただし、同条の対象となるのは、職務関連賃金(基本給、賞与等)のみです。

通勤手当は、「職務の内容に密接に関連して支払われるもの」を除いて、職務関連賃金には当たらないとされています(パート則3条)。

「職務の内容に密接に関連…」する例としては、「現実に要する費用に関係なく、一律の金額が職務関連賃金の一部として支払われている場合」等が挙げられます(平236.07.24雇児発0724第1号)。

一方、有期契約労働者に関しては、「期間の定めがあることにより、無期労働者の労働条件と相違する場合には、職務の内容等を考慮して不合理と認められるものであってはならない」と規定されています(労契法20条)。

通勤手当について正社員等と格差を設けることは、職務の内容、人材活用の仕組みその他の事情を考慮して特段の事情がない限り合理的とは認められないと解されています(平24.08.10基発0810第2号)。

現状は、パートと有期契約労働者で、取扱いに微妙な差があるようです。

この点について、働き方改革実行会議で示された「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」では、「通勤手当について、有期雇用労働者またはパートタイム労働者にも、無期雇用フルタイム労働者と同一の支給をしなければならない」という考え方を提示しています。

ご質問のケースで、パートに対して「日額支給制」を取っているのは週5日フル出勤でないせいと考えられます(フル出勤なら、定期代の方が実費支給より安いはず)。

定期代支給方式を採る場合、出勤日数に関係なく、毎月の本人負担は同額です。しかし、日額支給の場合、交通機関を利用しない日は切符を買う必要もないので、通勤手当を支払わないのは当然といえます。

これは、パート・有期雇用労働者であるがゆえの差別ではなく、職務の内容に応じた合理的な差異とみてよいでしょう。なお、均衡処遇の問題については、働き方改革関連法の整備により、さらに取扱いの明確化が図られる予定です。

【健康保険法】育休復帰後に定時決定か
2018/08/03
■ 「月額変更届」を提出

【問】

標準報酬月額の定時決定ですが、育児休業の取得者について質問があります。5月半ばに職場復帰したので、「育児休業終了時の月額変更届」を提出することになるかと思います。この方は、定時決定の対象になるのでしょうか。

● 7〜9月改定は除外(等級変動なければ基礎届)

【答】

被保険者の標準報酬月額は、入社時(資格取得時)に決定します(健保法42条)。

その後、報酬の水準に若干の変動があっても、資格取得時の標準報酬月額を固定で用いるのが原則です。ただし、報酬の変化を適正に反映するため、次の4種類の改定方法が定められています。

@ 定時決定(健保法41条)

A 随時改定(同43条)

B 育児休業終了時の改定(同43条の2)

C 産休終了時の改定(同43条の3)

@の定時決定は、毎年4月から6月までの報酬月額を基に、9月から1年間の標準報酬月額を定める仕組みです。

事業主は7月1日から10日までの間に、算定基礎届(標準報酬月額の改定に関する届出)を提出する必要があります。

定時決定は被保険者全員が対象ですが、次の3種類の被保険者は除外されます。

1) 6月1日以降の資格取得者

2) 7月1日以前の資格喪失者(6月30日以前の退職者)

3) 7月から9月までのいずれかの月に前記A随時改定、B育児休業終了時の改定、C産休終了時の改定の対象となる者

B育児休業終了時に関しては、「育児休業終了日の翌日が属する月以降の3ヵ月」の報酬支払実績を基に(健保法43条の2第1項)、「育児休業終了日の翌日から起算して2月が経過した日の属する月の翌月」から標準報酬月額が改定されます(同2項)。

お尋ねにある方が、5月半ばに職場復帰したのなら8月が改定予定月となります。

この場合、定時決定の対象から外れますが、仮に変更対象とならなかったときは、その時点で算定基礎届を提出しなければなりません。

【労働基準法】カンパを賃金控除可能か
2018/08/03
■ 任意が穏当とは思うが

【問】

このたびの災害に際し被災地域の各営業所に対し、カンパを送る計画が持ち上がりました。方法として、任意にいくらというのがベターとは思いますが、ごく少額を賃金から一律控除する方法というのは認められないのでしょうか。

● 不合理な差が無ければ許容だが(「一律支給」は注意が必要)

【答】

賃金は、その全額を直接労働者に支払うことが原則です(労基法24条)。その例外として、@ 法令に別段の定めがある場合、あるいは

A 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合、

賃金から一部の金額を控除することが認められています。

労使協定により控除できるのは、社宅や寮の費用などとされています(昭27.09.20基発675号、平11.03.31基発168号)。

A 労使協定を締結するうえで、控除を希望しない者の意思はどうなるのでしょうか。

労使協定の代表的なものとして時間外・休日労働(36)協定があります。使用者として、過半数労組等との協定を労基署に届け出てはじめて適法に時間外労働等を行い得ることになり、協定当事者が第一組合であるときの少数組合員、その他非組合員にも、協定の効力は及ぶことになります。

一方、個々の労働者が、時間外または休日労働命令に従うべき義務があるかどうかは原則として別問題ということになります。

過去の震災において出された厚労省の労基法等に関するQ&Aでは、「労働者が自主的に募金に応じる場合は、一般的にはその労働者が当然に支払うべきことが明らかなものと考えられるため、過半数労組等との書面による協定を締結し、その労働者の賃金から募金額を控除することは可能」として、協定の締結自体は否定していません。

ただし、「労使協定があったとしても、募金に応じる意思がない労働者の賃金から義援金として一律に控除することは認められず、労基法違反」としています。

判例では、労組との間の合意要件の欠如を理由に全額払原則違反を肯定したものに、富士火災海上保険事件(東京地判平20.01.09)があります。労基法24条ただし書き後段(労使協定を締結した場合)の効力は、使用者において同条の全額払いの原則に違反する賃金の支払いがあった場合の刑事罰の免罰としての効力は認められても、多数派組合のほかに少数派組合が併存し、当該少数組合がこれに同意しておらず、かつ、その組合員が個別にも控除の取り扱いに同意していない場合においては、彼ら(少数派組合の組合員)に対してその効力を及ぼすことはできない、としています。

賃金控除協定があれば無条件に控除が認められるわけではないという点に留意が必要でしょう。

【健康保険法】月変で残業代含めるか
2018/07/04
■ 業務繁忙時期が重なる

【問】

当社では、秋に人事異動があり、それに伴い手当等も変動します。

年末にかけて残業代等が増えれば、それも含めて標準報酬月額を見直すという理解で正しいのでしょうか。

4〜6月の定時決定には、特例があったはずですが・・・。

● 「年間平均」の制度新設

【答】

10月や11月からの3ヵ月間の報酬をみて、標準報酬月額が2等級以上変動すれぱ、標準報酬月額等級を見直す必要があります(健保法43条、昭36.01.26保発4号)。

住宅手当など固定的賃金の変動のみで2等級の差がない場合でも、残業手当などを含めて考えます。

4〜6月に定期昇給等があり、そのタイミングで残業が増えるときもご質問と同様の問題が生じます。

こちらは「年間平均」の算定が可能となっています。

2等級以上の差が、「業務の性質上、例年発生する」ことが見込まれ、被保険者本人が同意していることが条件です。

随時改定も保険者算定(健保法44条1項)を行う場合に年間平均を用いる取扱いになりました(平30.03.01保発0301第8号)。

適用されるのは平成30年10月以降の随時改定が対象です。

【雇用保険法】離職証明書に日数記載
2018/07/04
■ 6割のみで賃金水準も低下

【問】

雇用保険の離職証明書ですが、休業手当の支払いがあった場合、「賃金支払状況等」の備考欄に日数等を記載します。

基本手当の計算の際、金額が低くならないよう配慮するためと理解していますが、どのような形で調整が実施されるのでしょうか。

● 分子・分母から除外する

【答】

従業員(雇保の被保険者が退職したとき、事業主はハローワークに資格喪失届を提出します。

その際、原則として「雇用保険被保険者離職証明書」を添付します。

記載要領(雇用保険被保険者離職証明書についての注意)をみると、「休業手当(労基法26条によるもの)が支払われたことがある場合には、備考欄に『休業』と表示のうえ、休業日数および支払った日数を記載するよう求めています。

基本手当の計算ベースとなる賃金日額は、「最後の被保険者期間6ヵ月の賃金総額を180で除して」算出するのが原則です(雇保法17条1項)。

但し、基本ルールに従うと賃金日額が著しく低くなり、離職者に不利となるケースもあり得ます。

「賃金日額の算定が困難なとき、または算定した額を賃金日額とすることが適当でないと認められるとき」に関しては、様ざまな例外が定められています(同条3項)。

その一つとして、「休業手当が支払われた日(緊急対応型ワークシェアリングによるときは別に定める)がある場合の取扱い」があります(雇用保険業務取扱要領)。

被保険者期間にカウントされるのは、「賃金の支払基礎日数が11日以上ある月」です(雇保法14条)。

休業手当は賃金に該当するので、その支払日は「基礎日数」にも含まれます。

ですから、基本ルールに従えば、休業手当が支払われた月も含め、過去6ヵ月の賃金総額を180で除します。

しかし、休業手当は低額(賃金の6割)ですから、離職者の賃金水準が不当に低く評価される結果となります。

このため、月給者については「賃金の総額から休業手当の額を控除した額を180日から休業日数を控除した日数で除して得た額」を賃金日額とするという例外ルールが設けられています(日給者はもう少し複雑です)。

なお、「全休業」の月については休業日数を30日として計算します(暦日数ではありません)。

【労働基準法】役職手当は除外賃金か
2018/05/23
■ 割増算定基礎を計算・・・時間外見合いと取り扱う

【問】

「名ばかり管理職」と認定された場合、未払い残業代の清算が必要という記事を読みました。

その記事中に、「役職手当が時間外見合い分と認められれば、割増賃金の算定基礎から除かれる」という説明があります。

役職手当は除外賃金項目に該当しませんが、役職手当抜きで単価を算定して問題ないのでしょうか。

● 「通常の時間分」に含まず

【答】

下級管理職に昇職し役職手当が付加されたものの、時間外割増賃金等が支払われていなかったとします。

管理職性が否定されれば、時間外労働等に相当する割増賃金が未払いとみなされます。

割増賃金は、「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額」に割増率を乗じて計算します(労基法37条1項)。

管理職には、毎月、基本給・役職手当・家族手当・通勤手当の4種の賃金項目が支給されていたとします。

割増賃金の基礎に算入しない賃金(除外賃金項目)は、労基法37条5項・労基則21条で列挙されています。

その中に家族手当と通勤手当は存在しますが、役職手当は含まれていません。

ですから、従業員サイドは、基本給・役職手当をベースとして割増賃金を計算し、その額が役職手当を超えている場合、その差額を請求するでしょう。

しかし、除外賃金項目については「制限的に列挙されているものであり、これらの手当に該当しない『通常の労働時間または労働日の賃金』はすべて算入しなければならない」と解されています(労基法コンメンタール)。

つまり、列挙されていない賃金項目でも「通常の労働時間・労働日の賃金」以外(時間外分)であれば除外可能という逆解釈となります。

そこで、経営側は基本給のみをベースとして割増賃金を計算するよう主張するでしょう。 時間外見合いの役職手当と固定残業代制の営業手当等は、名称は異なっても実態はよく似ています。

固定残業代制を採る場合、「何時間分の時間外割増賃金額相当の賃金」等と定めますが、この割増賃金の算定基礎には営業手当等(固定残業代相当)は含まれていません。

それと同様の考え方で、割増賃金の単価から時間外見合い分を除外することも可能です。

【労働基準法】年度中に年休増やすか?
2018/05/18
■ 「所定労働日数」が大幅増・・・前年稼働実績から比例付与

【問】

当社のパートは1ヵ月ごとの契約更新ですが、季節により所定労働日数に大幅な変動があります。

前年の出勤実績を考慮して、比例付与により年休を付与しています。

今回、通年作業を可能としたため、年休付与時に比べ出勤日数が相当程度に増えます。

「実績ベース」で付与した年休日数を、見直す必要があるでしょうか。

● 基準日以外の見直し不要

【答】

所定労働時間・日数が短いパート社員等の場合、年休の付与日数は「比例付与」により決定されます(労基法39条3項)。

対象となるのは、

@ 週所定労働日数が4日以下、または

A 年間の所定労働日数が216日以下の労働者(週30時間以上の労働者は除く)です。

付与日数は、週・年間の所定労働日数に応じて定められています(労基則24条の3)。

原則として週区分@が適用され、週以外で所定労働日数が定められている労働者についてのみ年区分Aが適用されます。

Aに該当する例としては、「月の前半だけ労働というように月単位で所定労働日数が定められている者、季節等によって所定労働日数が異なるなど年単位で所定労働日数が定められている者」が挙げられます。

どちらも週サイクルを超えて所定労働日数が変動します。

しかし、出勤がまったく不定期なわけではなく、年間の出勤カレンダーは事前に定まっています。

この事前スケジュールに基づき、付与日数が決まります。

ご質問のパート社員については、事前に「年間契約日数」の確定が困難な実態にあるようです。

こうしたケースに関し、訪問介護労働者に関してですが、「基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えない」という解釈例規が示されています(平16.08.27基発0827001号)。

仮にこの解釈に従うとしても、「過去の労働日数の実績」を「1年間の所定労働日数とみなして」処理することになります。

年休付与時点の「(みなし)所定労働日数」により付与日数を定めれば、今後の出勤実績に変動があっても見直しは不要です。

年休の付与日数は、「年度の途中で所定労働日数(週3日から4日など)が変更されても、増減されるものでない」(労基法コンメンタール)からです。

【労働基準法】役職手当を割増分に?・・・グレーな管理職へ支給
2018/05/16
■ 法41条適用ない場合を想定

【問】

時間外割増等の適用外としていた管理職について、労基法で定める「管理監督者」に該当しないと判断されたとします。

未払いの残業代の清算が必要になりますが、役職手当として払った分を「時間外見合い」として差引き調整が可能でしょうか。

「役職手当の支給を受ける役職者には、割増賃金を支給しない」と規定していた場合、どうでしょうか。

● 長時間労働の合意無効も

【答】

労基法では、「監督もしくは管理の地位にある者」に対し、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用を除外しています(41条2号)。

しかし、下位の役職者について、「管理監督者」性を否定する裁判例等が少なくありません。 この場合、未払いの割増賃金の処理が実務的な問題となります。

役職手当を割増賃金に充当できるかに関しては、少なくとも「就業規則や当事者間で役職手当の全部・一部(何円分、何時間分)について、割増賃金相当分を含む旨の明示・黙示による合意等が必要」という見解が示されています(安西愈「労働時間・休日・休暇の法律実務」)。

こうした定め方は、賃金の定額払いと同様の性質を帯びます。

ですから、実労働時間に対応する割増賃金額が時間外見合い分を上回る場合には、清算が必要という理屈になります。

しかし、少なくとも、時間外見合い分については、「支払い済み」という主張が可能です。 さらに、役職手当が時間外見合い分と認められれば、その分の金額が割増賃金の算定基礎から除かれるというメリットも生じます。

真正の管理監督者(割増の支払い不要)であれば、「清算を前提」とする合意を行うのは「自己矛盾」です。

しかし、グレーな管理者について、予防策を講じる会社も散見されます。

「役職手当の支給を受ける…支給しない」という規定(時間外見合いの規定と併用)は、「割増適用外の管理職には、管理監督者以外も含まれる」という解釈の余地を広げておくものです。

最終的には実態判断ですが、判例(穂波事件、岐阜地判平27.10.22)では、長時間労働を強いる根拠となるような管理者手当の規定について、合意を無効と判示しています。

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