【厚生年金法】未納分を補填できるか
2019/02/20
■ 基礎年金満額にならず

【問】

大学院の修士課程を終えて就職したので、20歳から24歳まで年金の保険料を納付していない期間がありました。

既に10年以上勤続期間があるのでこのまま定年まで勤めれば年金自体は受け取れると思いますが、20歳代に保険料の未納期間がある分、年金の額が少なくなるのではないかと言われました。

この分はカバーできないのでしょうか。

● 65歳以降に経過的加算

【答】

老齢厚生年金は、適用事業所に雇用され被保険者となっている期間が年齢に関係なく金額に反映されます。

これに対して国年の老齢基礎年金は、原則として満20歳から60歳までの480月間(40年間)が被保険者期間となり(国年法8条、9条)、60歳を超えて雇用されても当該超えた期間は対象になりません。

480月の保険料納付期間があれば満額となりますが、20歳から24歳で就職するまで保険料の納付がないと、当該期間に応じて減額されてしまいます。

そのため当分の間、厚生年金から「経過的加算」が支給されます(厚年法昭60附則59条2項)。

60歳以降も勤続すれば、国年の被保険者期間がその分長くなったと仮定した場合に得られる老齢基礎年金額との差額にほぼ相当する額を、65歳からの老齢厚生年金に加算するものです。

ただし、期間は通算して480月が上限となります。

【均等法】トイレ共用セクハラか
2019/02/20
■ 女性から設置要求

【問】

当社の営業所で建物が古いこともあり、トイレはやむを得ず男女共用です。

このたび、女性従業員からこれはセクハラであると指摘を受けました。

セクハラという認識はないのですが、どうなのでしょうか。

● 安衛法上で問題も

【答】

セクハラの判断基準は、職場において行われる性的な言動があるかどうか、ということになります(均等法11条)。

事業主は、こうした言動に適切に対応するために必要な体制の整備その他雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。

女性の訴えは、「トイレの中等で男性と鉢合わせになるのは決まりが悪い」といった趣旨でしよう。

セクハラには対価型と環境型の2類型があります(セクハラ指針)。

たとえばトイレの設置を求めたことに対して、あるいは鉢合わせ等の際に性的な言動が行われたかどうかを検討する必要があるでしょう。

セクハラ以前の問題として、安全衛生の面で問題が生じています。

安衛則628条では、男性用・女性用に区別したうえで、女性用便器は、女性労働者20人以内に1個以上とすることを求めています。

他フロアの利用なども検討してみてください。

【労働基準法】妊産婦に残業どこまで?
2019/02/20
■ 業務軽減の希望あるが・・・本人のみ対応可能な業務で

【問】

ベテラン女性社員が、第1子を妊娠中です。

管理職ではありませんが、現在、重要案件を担当しています。

高齢出産の部類に属し、本人は業務軽減を希望している様子です。

本人しか対応できないプレゼンテーション等が発生した場合、どこまで時間外等の対応を要請できるのでしょうか。

● 同意あれば一部免除も可

【答】

出産前の時期から、順に確認していきましょう。

妊産婦(妊娠中または産後1年を経過しない女性)を対象とする時間外・休日労働の制限は、本人の請求が前提です(労基法66条)。

「時間外・休日労働のみの請求、深夜業についてのみのもの、それぞれについての部分的なものも認められる」とされています(昭61.03.20基発151号)。

ですから、本人が「原則として時間外・休日労働の免除」を求めていても、本人の同意に基づき「代替困難な業務(重要会議への出席等)」に限って、時間外等の制限を請求しないという形を採ることは可能です。

ただし、「身体状況の変化に伴い、請求内容の変更があった」ときは、それに応じる義務があります。

このほか、均等法でも妊産好に対する配慮を定めています。

事業主は、時間外等の免除請求を理由として、不利益な取扱いをしてはなりません(均等法9条、性別を理由とする差別禁止指針)。

上司・同僚によるマクバラ予防も措置義務とされています(同11条の2、マタハラ指針)。

次に、産前休業は請求が前提、産後休業は強制付与とされています(労基法65条)。

ですから、産後休業中は、時間外はおろか「短時間の会議出席」等の要請もできません(産後6週間経過後は、本人の請求と医師の認定を要件に就労可能)。

産休が明けた後、本人から適法な育児休業の申出があれば、事業主は拒むことができません(育介法5条)。

仮に所定外労働の制限の請求が出されていたとします(育介法16条の8)。

同条には「事業の正常な運営を妨げるときは、この限りでない」という文言があります。

しかし、産後1年が経過するまでは、それとは別に労基法に基づく時間外免除の請求ができ、事業主は拒否できません。

このほか、育介法によるマタハラ規定にも留意が求められます。

【健康保険法】保険請求は会社で?
2018/11/28
■ 休職中の傷病手当金

【問】

業務上災害のとき、会社側が保険給付の手続きをします。

一方、私傷病で休職中の従業員が傷病手当金の請求をする際も同様に考えて良いのでしょうか。

● 労働者主体も「協力」を

【答】

労災に関しては、保険給付を受けるべき者が、事故のためみずから保険給付の請求を行うことが困難である場合、事業主は、助力しなければならない(労災則23条)としています。

一方、健保の傷病手当金を受けようとする者は、申請書を保険者に提出しなければならない(健保則84条)としていて、助力の規定はとくにありません。

ただし、同条2項2号は、「労務に服することができなかった期間」(4号)、「被保険者が報酬の全部または一部を受けることができるときは、その報酬の額および期間」(5号)に関する事業主の証明書を添付するよう求めています。

この点、申請手続きに対する「協力義務」があるとする一方で、「用紙を準備したうえで、従業員にサインを求めるべき義務があるとまでは解し難い」とした判例(ジェイテクト事件、東京地判平23.12.27はあります。

同訴訟のように従業員から満足な説明もなく請求を妨げたとクレームを受けないように、他山の石とすべきでしょう。

【労働基準法】男女差別に該当するか
2018/11/28
■ 扶養手当を夫へ支給

【問】

職場結婚し共働きで子育てをする社員に対し、男性に扶養手当を支給する慣例が「差別では」といわれました。

やはり問題でしょうか。

● 理由が性別なら違法に

【答】

雇用における男女差別禁止はその多くが均等法に規定されていますが、「賃金」について男女で差をつけることを禁じる規定は、均等法等が制定される以前から労基法4条に定められています。

賃金に関する「差別的取扱い」の例としては、性別を理由とした異なる賃金表や、性別により月給制と日給制に分けることなどが挙げられ、女性を不利に取り扱うだけでなく有利に取り扱っても同条に抵触します(昭22.09.13発基17号)。

扶養手当や住宅手当も賃金の一部であり、男性または女性のみに支給することはできません。

夫婦の一方を扶養する者を「世帯主」として手当を支給していた会社で、その後扶養されていた配偶者の収入が増加した際、男性はそのまま世帯主として手当を支給するのに対し、女性を世帯主として認めず手当を打ち切ることも違反とされています
(仙台高判平04.01.10「岩手銀行事件」)。

実質的に扶養をしている側に手当を支給するというのであれば差別にはなりませんので、本人たちの選択に基づき、どちらに支給するかを決めるのが妥当と思われます。

【労働基準法】産休として扱えない?
2018/11/28
■ 出産遅れて休業延長

【問】

就業規則を作る際、女性社員が最長で出産予定日の1ヵ月半前から休みを取れるようにしました。

ところがこの制度を利用した社員が、初産だったこともあり出産が予定日から10日近く遅れてしまいました。

予定日の1ヵ月半前から休みを取得していたため、当該1ヵ月半を超えて休んだ日は欠勤や年休取得といった扱いにせざるを得ないのでしょうか。

● 実際の出産日まで産前休業

【答】

労基法65条1項により、原則6週間以内に出産する予定の女性が産前休業を請求した場合は、使用者は必ず請求に応じなければなりません。

就業規則等で「1ヵ月半」とした場合、6週間未満だと同項に抵触しますが、月の日数が最も少ない2月でも半月は14日でちょうど2週間ですから、通常6週間以上の日数となり、この点で問題になることはあまり想定できないでしょう。

ただ、いつ出産するかで取得できる日数が異なってしまうので、公平を期すうえでは「6週間」等に修正したほうが良さそうです。

同項は、6週間以内に出産する予定の女性が「出産の日」まで産前休業を取得できるという趣旨で、実際に出産した日までが産前の期間に入ります(昭25.03.31基収4057号)。

就業規則上も、出産が遅れ休業が1ヵ月半を超えても、そのまま産前休業にすべきという結論になります。

【労災保険法】窓口で支払い必要か
2018/11/28
■ 通勤災害の療養給付

【問】

業務上や通勤災害が発生した際の連絡体制フローをまとめています。

保険給付も比較してみたところ、病院で診療を受けたときに通災は一部負担金が必要ということですが、これは窓口で直接支払うことになるのでしょうか。

● 休業給付から控除

【答】

業務上災害と通勤災害では、病院にかかった際の療養(補償)給付に関して違いがあります。

通災の療養給付は、200円の一部負担金を徴収するとしています(労災法31条2項)。

ただし、同一の通災で一部負担金を納付した者等に、適用はありません(労災則44条の2第1項3号)。

徴収方法として、法31条3項では、労働者に支払うべき保険給付の額から一部負担金の額に相当する額を控除できる、としています。

具体的には、療養給付を受ける労働者に最初に支給する休業給付であって最初に支給すべき事由の生じた日に係るものの額は、一部負担金を減じた額としています(法22条の2第3項)。

被災者が病院に直接支払うのではなく控除ということになりますが、休業給付を受給しない者については一部負担金の徴収は行わない(昭55.12.05基発673号)としています。

【労働基準法】36協定に法内残業含む?
2018/11/28
■ 所定超えたら割増支払う

【問】

当社の1日の所定労働時間は7時間30分です。

時間外労働を命じたときには、8時間までの30分にも割増賃金を支払っています。

36協定にもその時間を含めて、協定・届け出ています。

割増賃金を支払う時間を書く、というイメージでいいのでしょうか。

● 様式見直され「別管理」・・・現行は届出受理する扱い

【答】

労基法36条では、時間外・休日労働(36)協定で定めるところによって、法32条から32条の5までもしくは40条の労働時間または35条の休日に関する規定にかかわらず、労働時間を延長し、または休日に労働させることができるとしています。

法32条で1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないとしていて、36協定が必要なのはこの法定労働時間を超える労働について、ということになります。

いわゆる法内残業を含む協定は、一見すると、延長時間を法定時間になおすと何時間となるか不明となり、不適法な協定といえると解されています(昭57.08.30基発569号)。

こうした協定の取り扱いですが、「一定期間についての延長時間として、法定労働時間を下回る事業場の所定労働時聞を基準に定めた時間外労働時間の限度を協定し届け出る例、…が少なからずみられるところである。これらの届出は本来適正
な届出とは認められないが、労使慣行への影響等を配慮して、当分の間やむを得ないものとして取り扱うこと」(昭57.08.30基発569号、平元.2.15基発65号)として、本来は不適法な協定ですが、現実の労使の慣行を考えて当面はやむなく受理
していくという方針でした。

現在の36協定の様式では、延長することができる時間の欄には、1日と書かれています。働き方改革関連法により労基法が改正され、それに伴い36協定の様式も見直されました。

新様式では、1日の欄は、「法定労働時間を超える時間数」と「所定労働時間を超える時間数(任意)」という形に分けられています。

【厚生年金法】学生納付特例は無意味か
2018/11/28
■ 年金の額に反映されない

【問】

学生が20歳に達すると、国民年金保険料の納付特例制度(納付猶予)を利用できるという記事を読みました。

その中に「申請しても年金の額には反映されない」という趣旨の説明がありました。

金額が増えないのなら意味がない気もしますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。

● 未申請で未払い期間発生・・・受給権の取得に影響あリ

【答】

まず、特例を申請しないとどうなるかですが、その期間は国民年金保険料の「未払期間」となります。

一方、申請すると「その期間は保険料全額免除期間に算入できる」と規定されています(国年法90条の3)。

老齢基礎(厚生)年金は、保険料納付済期間と免除期間と合算期間の合計が10年以上で受給資格を得ます。

未払期間は対象外ですが、免除期間は納付済期間と同様に扱われます。

ですから、申請の有無は、受給権を得られるか否かに大きく関係します。

一方、老齢基礎年金の額は、保険料納付済期間・免除期間がそれぞれ何ケ月あるかに基づいて計算されます(合算期間は関係なし)。

免除期間(全額・4分の3・半額・4分の1)については、通常、保険料納付済期間より少ない金額が年金に反映されます。

例えば、全額免除期問は納付済期問の2分の1相当とされています。

しかし、老齢基礎年金の額を計算する際の全額免除期間については、「学生納付特例により納付を要さないとされた保険料に係る期間を除く」というかっこ書きが付されています。つまり、「申請しても年金は増えない」という結論になります(国年法、27条8号)。

年金を増額したいなら、追納する必要があります。

納付特例に関しては、未払期間(原則2年)と異なり、10年さかのぼって追納が可能とされています(国年法94条)。

なお、障害・遺族基礎年金に関しては、受給資格期問・年金額の計算ともに、免除(納付猶予)を受けている期間は、保険料納付済期間と同様に扱われます。

【雇用保険法】資格喪失届と同じ様式?
2018/11/28
■ 改姓した際に行う手続き

【問】

女性従業員が結婚し、姓が変わりました。

小規模企業なので、手続きをするのは久しぶりです。

雇用保険の場合、資格喪失届と共通様式で届け出たように記憶しますが、間違いないでしょうか。

● 共通様式使用は従来通り・・・変更届出の流れは簡素化

【答】

雇用保険の被保険者になると、固有の被保険者番号が付与され、以降、その番号に基づいて被保険者歴や保険給付の受給歴等が記録・管理されます。

被保険者の氏名に変更があった際には、従来、「雇用する事業主が、速やかに雇用保険被保険者氏名変更届を管轄ハローワークに提出」するものとされていました。

しかし、現在は、法改正により手続きが簡素化されています。

事業主は、以下の手続きを行う際に、併せて届出を提出すればよいという扱いです(雇保則14条)。

@ 被保険者でなくなったことの届出

A 雇用継続交流採用職員に関する届出

B 転勤の届出

C 個人番号の変更の届出

D 育児休業・介護休業開始時の賃金の届出

E 育児または介護のための休業または所定労働時間短縮の開始時の賃金の届出

F 高年齢雇用継続基本給付金の支給申請手続

G 育児休業給付金の支給申請手続

H 介護休業給付金の手続

結婚したばかりということですから、@BDG等の手続きと同時に届出を行うケースが考えられます。

たとえば育児休業給付については、現在「事業主を経由して」手続きを行うのが原則とされています(雇保則101条の13)。

初めて育児休業給付金の支給を受けようとするときは、「最初の支給単位期間の初日から起算して4ヵ月を経過する日の属する月の末日まで」に、事業主が八ローワークに対して「育児休業給付受給開始確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」(上記のGに該当)と「休業開始時賃金月額証明書」(同Dに該当)を提出します。

このタイミングで、氏名変更の手続きも行うことになります。

法改正後も、資格喪失届と氏名変更届の共通様式(4号)を用います。

届出を受けたハローワークからは、新しい被保険者証が交付されます。

なお、社会保険関係の手続きも変更されているので注意が必要です。

健保・厚年でも、従来、氏名変更の届出は「速やかに」行うものと規定されていました。しかし現在は、「マイナンバーと基礎年金番号が結びついている被保険者」は原則届出不要とされています(健保則36条など)。

なお、マイナンバーを有しない短期在留外国人等については、引き続き氏名変更の届出が必要です。

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